第7話

文字数 608文字

堀木はたかひろが彼の浮気を問い詰めてから30分以上も泣きじゃくっていた。

たかひろはじっと黙って床に座り込んだまま、彼が泣き止むのを待っていたが、一向にその気配がないのでとうとう痺れを切らし、重い口を開いた。

「あのねえ…堀木さん、本当にどうでもよかったら今こうやってあなたの所に来ないでしょう?
おいらだって、あなたと一緒に居たいのは山々なんですが、なかなか日本に帰る目処が立たなかったんです」

たかひろは堀木の肩を抱き起こした。

「そうじゃない、なんで俺を置いて嫁さんと一緒になったか、って言ってんの!」

「しょうがないじゃないですか…。男同士じゃ、子供作れないんですから…。
堀木さん、おいらだって色々考えたんですよ。あなたとずっと一緒にいる道を選ぶか、家族を作る道を選ぶかって。でもこの選択で堀木さんにここまで辛い思いをさせているなんて、思いもしませんでした」

堀木はしょんぼりとして黙ったまま、床に座り込んでいた。

「さっきはカッとなってやりすぎました、すみません。確かにおいらにはあなたを束縛する権利はないかもしれません。もしあなたがあの写真の人と一緒にいたいなら、そうしてください。おいらはいつでもあなたと会えるわけじゃないし、このまま束縛し続けていたらあなたが独りになってしまうから」

「いやだ!俺はお前がいいの!」

「うーん…おいら、どうすればいいですかねえ…」

たかひろは髭を蓄えた顎を撫でながら、困惑したように笑った。

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