第2話

文字数 690文字

たかひろに別れを告げられたのは、ある日突然のことだった。

それまで堀木は幸せの絶頂の中で、彼とずっと一緒にいられるものだと信じていたが、たかひろの言葉ひとつでそれがすべて崩れ去ってしまったのだ。

「堀木さん、実はおいら、結婚したい女性がいるんです。それで、その人の仕事の都合で海外に移住しなければならないから、あなたの部屋から出て行かなきゃならないし、昔みたいに頻繁に会うことができなくなりそうです」

いつも薄ら笑みを浮かべ、時折何を考えているのかわからないところもあるたかひろが、この時ばかりは深刻な面持ちで堀木に話を切り出した。

今まであなたに黙っていて悪かったと思っている、あなたのことを見捨てるわけじゃない、用事で日本に帰る時は必ずあなたに会いに行く。

たかひろは堀木に語りかけたが、堀木は事実を受け入れることができず、ただ呆然とするばかりだった。

以前から子供が欲しいと言っていた彼が、結婚という道を選ぶのはなんら不自然なことではなかったが、堀木にとってはそれが自分に対する裏切りだと感じていた。

普通の友人関係なら、親友であるたかひろの幸せを願い、祝福するのが当たり前のことかもしれない。

でも、堀木はそうすることができなかった。

いつまでも自分だけを見ていて欲しい、自分だけのたかひろでいてほしい。

それなのに、なぜ行ってしまうの?

愛し合っていると思っていたのは、俺の思い違いだったんだろうか…。

堀木はたかひろが部屋を出て行き、新しい伴侶と共に海外へと旅立った後もずっと、心の中にわだかまりを抱えたまま、淋しさの中で愛する人のいない日々を送っていた。

そんな時に出会ったのが大野だった。
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