第17話

文字数 483文字

あれから一年が経過し、大野と堀木は生活を共にするようになった。

大野はこれまでの自堕落な生活を塗り替えて、この身のすべてを堀木と芸術に捧げるようになった。

個展を開くために毎日のようにキャンバスに向かい、試行錯誤を重ねる。

そして、その隣には彼の「睡蓮」がいる。

彼は恋人のことを花になぞらえて「睡蓮」と呼んだ。

彼にとって、堀木は睡蓮のように純粋で無垢な愛おしい人だ。

いつでも咲き誇っていてほしい、と彼は願う。

けれど、時々ふっと、堀木の顔が淋しげに曇ると、それを見た大野も悲しい気持ちになるのだった。

あれ以来、堀木とたかひろは会うことも連絡を取り合うこともなかった。

きっと奥さんや子供と幸せに暮らしているのだろう。

それとも、心配かけまいとして黙っているのだろうか。

心配しないで、おれは急にいなくなったりしないから・・・。

いつかまた、初めて出会った時のように、一緒にモネを見に行こう。

楽しい思い出と、色鮮やかな「睡蓮」に囲まれながら、きみとの月日を重ねたい。

色鮮やかな未来をきみと共に描きたい。

おれの睡蓮が開花し、微笑みかけてくれるのが、おれにとって何よりも幸せだから。



「完」
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