第9話

文字数 571文字

イギリス、ロンドンの自宅の書斎にて、たかひろが例の写真を見つけたのは、彼が仕事に取り掛かろうとしていた時だった。

朝起きて、いつものようにコーヒーを飲みながら PC で仕事のメールをチェックしていると、ある一通のメールがたかひろの目に留まった。

"from:Akihito Ono"

見覚えのない相手からのメールを不審に思いながら開くと、そのメールに添付されていた写真には信じがたい光景が映し出されていたのであった。

日本で帰りを待っているはずの恋人が、自分の知らない若い男と一緒に写っている。

それを見た瞬間、冷水をかけられたかのように、頭の中がサッと冷たくなるのを感じた。

どうして?堀木さんはもうおいらのことを忘れてしまったの?

そして何故、相手の男はこの写真をわざわざ送ってきたんだろうか。
堀木さんとおいらの関係を知っていて、おいらに見せつけるために送ってきたとしか思えない。

許せない、おいらだけの堀木さんをこんな年下の男に奪われるなんて。

たかひろは嫉妬と怒りで仕事に手がつかず、爪をガリガリと噛みながら、ずっと、男から堀木を奪い返すにはどうしたらよいか考えていた。

―少なくとも、この男には釘を刺してやらねばならない。

たかひろはそう思い立つが早いか、仕事で外に出ている妻の由季子には何も告げないまま、荷物を手早くまとめ、日本へと戻ってきたのだった。

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