第56話 季節の先取り

文字数 922文字

 夏服のバーゲンは、とっくに終わっていますが、今更ながら世間は季節の先取りが過ぎると思いませんか。そのうち夏に冬服、冬に夏服、先へ進んで年中何でも有りみたいになったりして。

 私が20代のころは、夏のバーゲンは8月のお盆過ぎ辺りからだったように思う。しかし最近は1ヶ月ほど早い。残暑が長引く昨今、バーゲンが早いのは消費者にとって良いことなのだが、9月に入って、おせちの予約はあまりにも早くないか?ここ数年、おせちはデパートで注文することが恒例になった我が家だが、年末の受け取り時期には何を注文したのか忘れ、間違って届けられてもきっとわからない。

 そうかと思えば、追従するように年賀状の印刷サービスのDM。これも早くなった。翌年までまだ3ヶ月以上あるのだ。急かされているようで、気分が乗らない。それと時代の流れというべきか、去年辺りから、年賀状の枚数を従来の半分以下にした。年賀状をやめた相手は2通り。LINEでいつもやりとりがある人、そして高齢で相手側から辞退の申し出があった人。だから随分楽になった。

 私の年賀状は、私なりのポリシーがある。宛名書きは墨文字、裏面は長文の近況報告。出す相手のほとんどが年賀状のやり取りで繋がっているだけだからだ。子どもたちが小学生くらいまでは、家族写真で子どもの成長と共に自分の近影を知らせることができた。個々に年賀状を作り始めたときから、私の写真は徐々にやめていったので、一目瞭然とはいかなくなった。その替わりで長文の近況報告が始まったというわけだ。

 手前味噌になるが、いただいた年賀状の中に私以上の長文が書いてある物を未だ見たことがない。別に同じようにして欲しいとは思わないが、宛名も裏面も印刷のみの物を見ると『来年は、こちらから辞退した方がいいかな』と要らぬ気遣いをしてしまう。ただ、年賀状の切れ目が縁の切れ目みたいな感覚は否めないので、辞退は慎重にすべきだと思ってはいるが……偶然にも再会したときに気不味くならないような魔法の辞退言葉が欲しい。

 出会いっぱなしで、交流も無くなったのにズルズルと年賀状を送る。相手も同じ気持ちだろうと想像できますが、気持ちの何処かに縁を切りたくないと思うのも本音なのです。
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