第34話 いただきます

文字数 956文字

 焦げるような暑さが嘘のよう。朝の過ごしやすいこと。今年はカレンダー通りに秋が深まっていくのかな…… 夏の間にたくさん雨が降ったから、秋の長雨や台風は無しってことになりませんかね。

 少し前からウォーキングのときに聞くようになった虫の音。まだこんなに暑いのに、出てきて大丈夫?と思っていたが、虫はすでに秋を感じ取っていたようだ。最近の私は、食べ物で季節が変わるのを感じる。若いころは、どの季節にどんな食べ物がとれるかなんて全くわからなかった。さすがに、スイカは夏の物くらいは認識していたが。

 季節物を先取りすると良いなどと言われ、スーパーで見る。今は無花果(いちじく)、巨峰、梨、鮭辺りが旬か。秋刀魚はまだまだと言うより、今年は脂の乗った立派な物が出回るだろうか?の方が気がかり。調理は、もちろん焼き。煮魚が苦手な私の魚料理は、ほとんど焼いて出来る物。

 先日、ママ友から北海道産の帆立とホッキ貝をもらった。いずれも産地直送。帆立は何度か下処理をしたことがあったが、ホッキ貝は初めて。そもそも、ホッキ貝と言われても想像できないくらいの認知度だったから、もらったときは、その大きさに驚いた。握り拳くらいの貝は少し怖いくらい。しかも生きている。ママ友は下処理の方法までLINEで送ってくれ、作業開始。

 耳をすますと微かに、キュルルル……と聞こえる。生きてる…… 以前アサリを砂出ししていたときに、あまりにも元気よく身を乗り出す姿を見て鍋に入れるのをためらうほどの気持ちになった。それなのに、このホッキ貝。食べるところまで辿り着けるか…… 小娘じゃあるまいしとチャチャを入れられそうだが、自分で〆る料理がし辛くなった。

 しっかり閉じられている貝の僅かな隙間に、食事用のナイフを差し込みこじ開ける。なんでも毒の部分があるので、しっかり取れとの説明があった。初めての下処理に毒の処理。命をいただくのだから、食べられないでは申し訳ない。最後の貝を処理するころには、すっかり度胸がついた。
ママ友は、刺身は心配だからバター焼にすると言っていた。私は、とことん味わいたかったので、刺身にした。見栄えはいまひとつだったが、甘くて美味しい貝だった。

 回るお寿司屋さんにあっても、たぶん取らないであろうホッキ貝。今度見つけたら、食べてみようと思います。
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