6 進出
文字数 440文字
訓練のうちに年は明け、昭和二十年正月初め。
第七二一航空隊は上京し、天皇陛下に拝謁した。
そして、まもなく連合艦隊命令は来た。
「第七二一航空隊は、南九州へ進出せよ」
ついに、米国艦隊と戦う時が来た。歓声を上げる者、ぐっと唇をかむ者、部隊員の反応は様々だった。
一月下旬に、航空隊は九州、鹿児島の鹿屋 基地に進出した。ここには、海軍第五航空艦隊の司令部が置かれ、宇垣 中将が指揮を執る。
すでに、鹿屋基地には桜花用のトンネル型掩体壕 が十カ所設置され、実戦用の桜花が分散配置された。
掩体壕の暗がりの中、裸電球に照らされて浮かび上がる桜花は、灰白色に塗られ、一種不気味だった。機首には、機番と桜の印が赤く塗られていた。
「本物の桜花だ」その機体をじっくりと見た谷田部は、言葉もなかった。
ただ「それは、巨大な弾丸に見えた。これの乗っていく自分に思いが至り、半ば敵艦隊を撃滅したような気分がわき起こってきて、身震いした」という。
第七二一航空隊は上京し、天皇陛下に拝謁した。
そして、まもなく連合艦隊命令は来た。
「第七二一航空隊は、南九州へ進出せよ」
ついに、米国艦隊と戦う時が来た。歓声を上げる者、ぐっと唇をかむ者、部隊員の反応は様々だった。
一月下旬に、航空隊は九州、鹿児島の
すでに、鹿屋基地には桜花用のトンネル型
掩体壕の暗がりの中、裸電球に照らされて浮かび上がる桜花は、灰白色に塗られ、一種不気味だった。機首には、機番と桜の印が赤く塗られていた。
「本物の桜花だ」その機体をじっくりと見た谷田部は、言葉もなかった。
ただ「それは、巨大な弾丸に見えた。これの乗っていく自分に思いが至り、半ば敵艦隊を撃滅したような気分がわき起こってきて、身震いした」という。