その5のつづき 『モモ』(ミヒャエル・エンデ作)
文字数 1,666文字
スーパーヒロイン・モモが、じっさいどんな子か、まだお話ししていませんでした。
いわゆる不思議ちゃんではぜんぜんないです。かといってスターでもアイドルでもありません。おとなしい、静かな子。でも、モモといると、みんな幸せ。
それはもちろん彼女に、特殊な能力があるからです。
この特殊能力、一つだけと言われたら、私がどうしても欲しい、めちゃくちゃ凄いスーパーパワーです。モモ本人はどうやら自覚がなくて、当たり前のことと思っているみたいなんですけどね。
モモは、《聞き上手》なんです。
黒い瞳をぱっちり開けて、黙って聞いてくれるだけなのですが、聞いてもらう人は聞いてもらううちに、あれ、なんで怒ってたんだったかなとか、たしかにおれも悪かったよとか、そうかそうすればいいのかとか、自分で解決法を見つけてしまうんですね。
もうね、一家に一台は無理でも、一町村に一台モモと思いませんか? 笑
灰色の男たちは、モモだけは、落とすことができません。
何も欲しがらないモモには、「時間を節約する、そしてそれによって生活のレベルを上げる」ということの意味が、わからないのです。だから、通用しない。
あまつさえ、モモに見つめられたメンバーの一人が、その澄んだ瞳につりこまれて、うかうかと告白してしまいます。自分たちは時間銀行なんかじゃない。本当は、時間を、人間から盗みとって、奪っているのだと……。
!!
どうする、モモ?
ここで! ここで彼女の味方として登場するのが、また、私の大好物の! 素敵グランパなのです!!
マイスター・ホラ。すべての時間の源をつかさどる賢者です。はっきり老人とは書かれていなくて、やっぱり年齢不詳。きゅうに若者に見えるときもあります。
優しくて、深くて、いたずらっぽくて。でも、ふと見せる表情に、憂いが。
モモを自分の住み家、大小無数の時計がきらめく「時間の館」(正確な名前は《どこにもない家》)に招き、はちみつパンとホットチョコレートもごちそうしてくれます。
小学5年生でこの本に出会って以来、私の理想の男性、究極のスーパーヒーローは、このマイスター・ホラなんです。
だってはちみつパンがめちゃくちゃ美味しそうで!(そこかい)
全人類に時間を送り届けているマイスター・ホラですが、じゃあ迫ってくる灰色の男たちの暴力に対して何ができるかというとですね。
なんと彼は。寝るんです。眠る。
は?
彼が眠ると、時間が止まるんですね。人類もいっしょに止まります。動けるのは灰色の男たちと、マイスター・ホラから全権をたくされたモモだけ。それも、一時間のあいだだけ。時間の花は一度に一輪しか咲かないから。
そうそう、例のカメさん、カシオペアも動けます。前のページで説明したとおり、とくに技とかはないんですけどね。「すくなくとも、なぐさめにはなります」(モモ談)。
ポケットにカメ、手には一輪の花。
制限時間、一時間。そのあいだに、灰色の男たちのアジトをつきとめ、葉巻の原料にされている《時間の花》を奪還して彼らの兵糧を絶ち、かつ、その花たちを人類に返さなくてはなりません。しかも敵はすでに彼女に追っ手をかけていて、捕まればモモ自身の命が危ないのです。
聞き上手という才能なんて、彼らの、組織ぐるみの、問答無用の暴力の前にはなんの役にも立ちません。
さあ、どうする。
どうする、モモ?
……
つづきはぜひ、本編で!
『モモ 時間どろぼうとぬすまれた時間を人間にかえしてくれた女の子のふしぎな物語 』
ミヒャエル・エンデ作、大島かおり訳、岩波書店。
初版1976年、岩波少年文庫2005年第一刷、2020年第31刷。
少年文庫も作者本人によるオリジナルイラスト入りですが、
(考えたら私のセレクション岩波さんの多すぎ。でも回し者とかじゃないですから、偶然ですからホントに、ここ講談社さんのサイトだってちゃんとわかってますから!(泣))、
2001年に美しい愛蔵版が出ました。ファンにはたまらない、とっても素敵な造本です。懐中時計の中にカシオペアがいます。
いわゆる不思議ちゃんではぜんぜんないです。かといってスターでもアイドルでもありません。おとなしい、静かな子。でも、モモといると、みんな幸せ。
それはもちろん彼女に、特殊な能力があるからです。
この特殊能力、一つだけと言われたら、私がどうしても欲しい、めちゃくちゃ凄いスーパーパワーです。モモ本人はどうやら自覚がなくて、当たり前のことと思っているみたいなんですけどね。
モモは、《聞き上手》なんです。
黒い瞳をぱっちり開けて、黙って聞いてくれるだけなのですが、聞いてもらう人は聞いてもらううちに、あれ、なんで怒ってたんだったかなとか、たしかにおれも悪かったよとか、そうかそうすればいいのかとか、自分で解決法を見つけてしまうんですね。
もうね、一家に一台は無理でも、一町村に一台モモと思いませんか? 笑
灰色の男たちは、モモだけは、落とすことができません。
何も欲しがらないモモには、「時間を節約する、そしてそれによって生活のレベルを上げる」ということの意味が、わからないのです。だから、通用しない。
あまつさえ、モモに見つめられたメンバーの一人が、その澄んだ瞳につりこまれて、うかうかと告白してしまいます。自分たちは時間銀行なんかじゃない。本当は、時間を、人間から盗みとって、奪っているのだと……。
!!
どうする、モモ?
ここで! ここで彼女の味方として登場するのが、また、私の大好物の! 素敵グランパなのです!!
マイスター・ホラ。すべての時間の源をつかさどる賢者です。はっきり老人とは書かれていなくて、やっぱり年齢不詳。きゅうに若者に見えるときもあります。
優しくて、深くて、いたずらっぽくて。でも、ふと見せる表情に、憂いが。
モモを自分の住み家、大小無数の時計がきらめく「時間の館」(正確な名前は《どこにもない家》)に招き、はちみつパンとホットチョコレートもごちそうしてくれます。
小学5年生でこの本に出会って以来、私の理想の男性、究極のスーパーヒーローは、このマイスター・ホラなんです。
だってはちみつパンがめちゃくちゃ美味しそうで!(そこかい)
全人類に時間を送り届けているマイスター・ホラですが、じゃあ迫ってくる灰色の男たちの暴力に対して何ができるかというとですね。
なんと彼は。寝るんです。眠る。
は?
彼が眠ると、時間が止まるんですね。人類もいっしょに止まります。動けるのは灰色の男たちと、マイスター・ホラから全権をたくされたモモだけ。それも、一時間のあいだだけ。時間の花は一度に一輪しか咲かないから。
そうそう、例のカメさん、カシオペアも動けます。前のページで説明したとおり、とくに技とかはないんですけどね。「すくなくとも、なぐさめにはなります」(モモ談)。
ポケットにカメ、手には一輪の花。
制限時間、一時間。そのあいだに、灰色の男たちのアジトをつきとめ、葉巻の原料にされている《時間の花》を奪還して彼らの兵糧を絶ち、かつ、その花たちを人類に返さなくてはなりません。しかも敵はすでに彼女に追っ手をかけていて、捕まればモモ自身の命が危ないのです。
聞き上手という才能なんて、彼らの、組織ぐるみの、問答無用の暴力の前にはなんの役にも立ちません。
さあ、どうする。
どうする、モモ?
……
つづきはぜひ、本編で!
『モモ 時間どろぼうとぬすまれた時間を人間にかえしてくれた女の子のふしぎな物語 』
ミヒャエル・エンデ作、大島かおり訳、岩波書店。
初版1976年、岩波少年文庫2005年第一刷、2020年第31刷。
少年文庫も作者本人によるオリジナルイラスト入りですが、
(考えたら私のセレクション岩波さんの多すぎ。でも回し者とかじゃないですから、偶然ですからホントに、ここ講談社さんのサイトだってちゃんとわかってますから!(泣))、
2001年に美しい愛蔵版が出ました。ファンにはたまらない、とっても素敵な造本です。懐中時計の中にカシオペアがいます。