なかやすみ(かんわきゅうだい)

文字数 646文字

 子どものとき、素敵な大人の出てくるおはなしが好きでした。

 思春期から青年期にかけても、素敵な壮年や長老の活躍する物語が好きでした。
 反対に、好きではなかったのは、自分と同世代の若者ばかりがキラキラして、大人や老人は偉そうにいばり、抑圧してくるだけ。若者の敵。見た目も、若者だけが美しく、年をとった人たちはもう美しくもなんともない。
 そんな物語が、どうしてもだめでした。

 まだ理解はしていなくても、直感で知っていたのだと思います。
 自分も、大人になる。
 年をとる、ということを。
 だから、「こういう大人になりたい」「こういうお年寄りになりたい」と憧れられる登場人物が出てくると、夢中になりました。

 だらしなく寝ころんでいるばかりのお父さんとか、
 口うるさく文句を言うばかりのお母さんとか、
 そんな大人しか出てこない幼年童話などを読むと、哀しくなります。

「子どもに夢と希望を与える」
 よく聞く言葉だけれど、
 幼い私にとっていちばんの希望と夢は、
 子どもや若者が好きほうだいできる世界ではなく、

 先に行って待っていてくれる、魅力的な大人のいる世界でした。
 自分の知らない、知恵と経験を持ち、
 若さとひきかえに、若者にはない圧倒的な美しさを手に入れた人たち。
 長く豊かな、真っ白な髪とひげ、とかね。

 思ってたんです。
 とても泣き虫だったので、
 自分がこんなに泣くのは、まだ子どもだからだと。
 いつかきっと、大人になって、泣かなくてすむようになれるのだと。素敵な大人に。

 なれてませんけどね、まだ。笑
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