第16話 教団離脱
文字数 1,262文字
「ミック、逃げようよ。私、聞いちゃったの」
教団内部の一番小さな礼拝堂にミックを呼び出したサンドラが、誰もいないことを確認し囁く声で話し出した。教徒たちは各自の部屋で眠りについている頃だ。二人はこの教団で知り合い、交際が始まってもうすぐ二年になる。最近、二人は教団を疑い始めていたところだった。
「どういうことだ?」
「トーマス議員の息子がテロを起こしたって事.....スミス議員が電話で話してたのを聞いてしまったの。上手く事が運んだって」
「本当か?なぜだ?何のために?」
「わからないわ。それに最近、不法移民でここへ来た若い女の子たちが次から次にいなくなるの。疑わしくて」
「まさか、どこかに売られたか?」
「本当に分からないわ。とても怪しくて怖いわ」
「きっと大丈夫だよ。このこと誰にも話しちゃだめだよ」
◇◇◇
翌日
サンドラは自殺したと指導リーダーが教徒たちに伝えられた。
ミックはサンドラが殺されたに違いないと確信した。
◇◇◇
教団へ勧誘してくれ、仲間に入れてくれたショーンには申し訳ないが、もうここを出るしかない。教団のために新たな人を勧誘し、集めたお金すべて寄付をし、全身全霊をささげてきた教団が今はもう信じられない。
カナリア新教というところは仲間意識が高く、家族と称しては心の弱みに付け込んで、優しく接してくれる。これはすべてマニュアル通りだ。ミックもその通り教団の為動いてきた。心を解放してくれると信じて。
でも、もう今は後悔しかない。
ミックがチームリーダーのショーンに教団を離れることを話した時、はじめは驚いて引き留めたが、最後は快く理解してくれたことは意外だった。
キックは教団を離脱した。
◇◇◇
カラモント大学は特別優秀な大学ではないものの、スポーツも盛んで人気はあった。中でもアメリカンフットボールとバスケットボールは強豪校で知られていた。
潜入捜査とはいえシャロンはキャンパスライフを楽しんでいた。高校を卒業してすぐに警察学校に入学したシャロンは大学というものを知らないので、とても新鮮だった。
ベンチに座ってヘッドホンで音楽を聴き、『消えた記憶を呼び覚ます』という論文を読んでいたらミックが通りかかった。
「ミックじゃない?元気だった?教団抜けたんだってね」
シャロンはヘッドホンを外し、声をかけた。
ミックの顔色は悪く、最近何も食べていないような感じだ。
「ああ」
ミックはとぼとぼと、うつむきながら歩きだしたのをシャロンは追いかける。
「どうしたのよ。何かあった?話聞くよ」
シャロンは本当に心配になってきた。
「サンドラの事ね。知っているわ」
単刀直入で切り込んでみる。反応を確認するためだ。
意表を突かれたミックの顔色が青ざめていくのが見て取れた。
「なぜ?」
「私にはわかるのよ。自殺じゃないね。話して」
「そ、そうなんだ。どうしてこうなったんだ。わからない.....」
「教団内部で何かあるのね」
「たぶん....」
真実を話すと教団に殺される。でも、サンドラのために真実を知りたい。
「ミック話して」
教団内部の一番小さな礼拝堂にミックを呼び出したサンドラが、誰もいないことを確認し囁く声で話し出した。教徒たちは各自の部屋で眠りについている頃だ。二人はこの教団で知り合い、交際が始まってもうすぐ二年になる。最近、二人は教団を疑い始めていたところだった。
「どういうことだ?」
「トーマス議員の息子がテロを起こしたって事.....スミス議員が電話で話してたのを聞いてしまったの。上手く事が運んだって」
「本当か?なぜだ?何のために?」
「わからないわ。それに最近、不法移民でここへ来た若い女の子たちが次から次にいなくなるの。疑わしくて」
「まさか、どこかに売られたか?」
「本当に分からないわ。とても怪しくて怖いわ」
「きっと大丈夫だよ。このこと誰にも話しちゃだめだよ」
◇◇◇
翌日
サンドラは自殺したと指導リーダーが教徒たちに伝えられた。
ミックはサンドラが殺されたに違いないと確信した。
◇◇◇
教団へ勧誘してくれ、仲間に入れてくれたショーンには申し訳ないが、もうここを出るしかない。教団のために新たな人を勧誘し、集めたお金すべて寄付をし、全身全霊をささげてきた教団が今はもう信じられない。
カナリア新教というところは仲間意識が高く、家族と称しては心の弱みに付け込んで、優しく接してくれる。これはすべてマニュアル通りだ。ミックもその通り教団の為動いてきた。心を解放してくれると信じて。
でも、もう今は後悔しかない。
ミックがチームリーダーのショーンに教団を離れることを話した時、はじめは驚いて引き留めたが、最後は快く理解してくれたことは意外だった。
キックは教団を離脱した。
◇◇◇
カラモント大学は特別優秀な大学ではないものの、スポーツも盛んで人気はあった。中でもアメリカンフットボールとバスケットボールは強豪校で知られていた。
潜入捜査とはいえシャロンはキャンパスライフを楽しんでいた。高校を卒業してすぐに警察学校に入学したシャロンは大学というものを知らないので、とても新鮮だった。
ベンチに座ってヘッドホンで音楽を聴き、『消えた記憶を呼び覚ます』という論文を読んでいたらミックが通りかかった。
「ミックじゃない?元気だった?教団抜けたんだってね」
シャロンはヘッドホンを外し、声をかけた。
ミックの顔色は悪く、最近何も食べていないような感じだ。
「ああ」
ミックはとぼとぼと、うつむきながら歩きだしたのをシャロンは追いかける。
「どうしたのよ。何かあった?話聞くよ」
シャロンは本当に心配になってきた。
「サンドラの事ね。知っているわ」
単刀直入で切り込んでみる。反応を確認するためだ。
意表を突かれたミックの顔色が青ざめていくのが見て取れた。
「なぜ?」
「私にはわかるのよ。自殺じゃないね。話して」
「そ、そうなんだ。どうしてこうなったんだ。わからない.....」
「教団内部で何かあるのね」
「たぶん....」
真実を話すと教団に殺される。でも、サンドラのために真実を知りたい。
「ミック話して」