第7話 集会
文字数 1,414文字
集会はシャロンが思っていたほど大規模ではなかった。会場は本部の横のホテルの一室で行われた。本部とは道を一本隔ててはいるがリョウの調べでは、教団が経営しているホテルだということが分かった。何から何まで怪しい。
講演にはいろいろな人が壇上に立ち、挫折から立ち直った話や、あたりさわりのないものだった。ゲストで議員が数名来ていた。中には民進平和党のスミス議員とトーマス議員の姿もあった。あの有名なコメディアンもいた。そのコメディアンが十字架にビー玉状のネックレスがナナメにかかったシルバーの置物を買うように力説している。あまり高価の様には見えないが、買うことによって地獄へ行かず天に召されるという事らしい。
信者なのか、ただ講演を依頼されただけなのかはわからないが、神が人々を救ってくれるとカナリア新教を絶賛していた。初めはシャロンも議員たちは選挙の票が欲しいだけなのかと思っていたが、違う怪しさを感じずにはいられない。いつもの熱を帯びた直感が体を通り抜けていく。
そして、最後の誰かの講演では死を恐れるな、信じていれば必ず救われると、戦争の映像などを流しながら唱えていた。カナリア新教を信じることだと訴えていた。そして寄付のお願いだ。
「やあ、来てくれたんだね」
講演が終わり食事が始まると、トムがいつもの笑顔で駆け寄り話しかけてきた。その横にはミックがいた。なぜかステュアートもいた。
「ええ、参加してよかったわ。気分がいいし前向きになれたわ。彼は誰?」
「ああ、彼はアスラン。彼も初めて集会に来てくれたんだ」
「初めまして。セイラよ」
「アスランだ」
シャロンはアスランに扮しているステュアートのあのにやけた笑顔が憎たらしかった。それにしてもステュアートは人の懐に入るのが早い。
「この団体に興味があるなら次回もどう?セイラもアスランも」
ミックが誘ってきた。
「もちろん行くわ。ほんとうにみんな仲が良いよね。親戚みたいだね。友達もたくさんできたわ」
「それはよかった」
ステュアートはこの場をすっと離れて行った。他に探りを入れに行ったようだ。
シャロンの勧誘に、もう少し時間がかかると思っていたが、トムはミックに次の段階に行くぞとばかりに目くばせをした。
「実はお布施が必要なんだ。端的に言えば寄付なんだ」
言いにくいそうにミックが話を切り出す。
「より心を救うにはお金なんだ。寄付の額が多ければ多いほど天国に近づける」
トムが話に割って入った。
「そうなの。そうよね。いくら?」
「千ドルからなんだ」
「今はそんな大金ないわ」
シャロンはお金で救われることが甚だおかしく感じたが、話を合わせる必要がある。
「今度でいいからお願い。教団の運営にも必要なんだ」
食い下がってきた。
「そうね。わかったわ」
そのやり取りを盗聴器で聞いていた張り込み中のスティーブンがあきれていた。
「そんなことで引っ掛かる奴いるのかよ」
両手をあげて吐き捨てるようにマリアに言った。
「いるんじゃないの。心が病んでいたらしがみつきたくなるじゃない。シャロンも気分がいいみたいだし。友達もできたし」
マリアがもっともらしいことを言った。
「おい、マリア。それはそうと、門を見てみろ。運んでいるのは爆弾じゃないのか?」
マリアも双眼鏡を覗き込んだ。
「そうだわ。間違いなさそうね。あのマーク」
「やばいな」
何故だかコメディアンが宣伝していたあの置物が異様なほど飛ぶように売れていた…
講演にはいろいろな人が壇上に立ち、挫折から立ち直った話や、あたりさわりのないものだった。ゲストで議員が数名来ていた。中には民進平和党のスミス議員とトーマス議員の姿もあった。あの有名なコメディアンもいた。そのコメディアンが十字架にビー玉状のネックレスがナナメにかかったシルバーの置物を買うように力説している。あまり高価の様には見えないが、買うことによって地獄へ行かず天に召されるという事らしい。
信者なのか、ただ講演を依頼されただけなのかはわからないが、神が人々を救ってくれるとカナリア新教を絶賛していた。初めはシャロンも議員たちは選挙の票が欲しいだけなのかと思っていたが、違う怪しさを感じずにはいられない。いつもの熱を帯びた直感が体を通り抜けていく。
そして、最後の誰かの講演では死を恐れるな、信じていれば必ず救われると、戦争の映像などを流しながら唱えていた。カナリア新教を信じることだと訴えていた。そして寄付のお願いだ。
「やあ、来てくれたんだね」
講演が終わり食事が始まると、トムがいつもの笑顔で駆け寄り話しかけてきた。その横にはミックがいた。なぜかステュアートもいた。
「ええ、参加してよかったわ。気分がいいし前向きになれたわ。彼は誰?」
「ああ、彼はアスラン。彼も初めて集会に来てくれたんだ」
「初めまして。セイラよ」
「アスランだ」
シャロンはアスランに扮しているステュアートのあのにやけた笑顔が憎たらしかった。それにしてもステュアートは人の懐に入るのが早い。
「この団体に興味があるなら次回もどう?セイラもアスランも」
ミックが誘ってきた。
「もちろん行くわ。ほんとうにみんな仲が良いよね。親戚みたいだね。友達もたくさんできたわ」
「それはよかった」
ステュアートはこの場をすっと離れて行った。他に探りを入れに行ったようだ。
シャロンの勧誘に、もう少し時間がかかると思っていたが、トムはミックに次の段階に行くぞとばかりに目くばせをした。
「実はお布施が必要なんだ。端的に言えば寄付なんだ」
言いにくいそうにミックが話を切り出す。
「より心を救うにはお金なんだ。寄付の額が多ければ多いほど天国に近づける」
トムが話に割って入った。
「そうなの。そうよね。いくら?」
「千ドルからなんだ」
「今はそんな大金ないわ」
シャロンはお金で救われることが甚だおかしく感じたが、話を合わせる必要がある。
「今度でいいからお願い。教団の運営にも必要なんだ」
食い下がってきた。
「そうね。わかったわ」
そのやり取りを盗聴器で聞いていた張り込み中のスティーブンがあきれていた。
「そんなことで引っ掛かる奴いるのかよ」
両手をあげて吐き捨てるようにマリアに言った。
「いるんじゃないの。心が病んでいたらしがみつきたくなるじゃない。シャロンも気分がいいみたいだし。友達もできたし」
マリアがもっともらしいことを言った。
「おい、マリア。それはそうと、門を見てみろ。運んでいるのは爆弾じゃないのか?」
マリアも双眼鏡を覗き込んだ。
「そうだわ。間違いなさそうね。あのマーク」
「やばいな」
何故だかコメディアンが宣伝していたあの置物が異様なほど飛ぶように売れていた…