第13話 テロ実行

文字数 918文字

 犠牲者は二十人を超えた。チャイニーズシティと呼ばれる中国移民の町がやられた。
 ほぼ全員が中国人で中華レストランなどが密集している地域だ。独特な香りの中、路地へ入ると人とバイクだらけで、いつもどこかで大声が聞こえ、地元民はあまり立ち入らない露店街だ。町は古びて汚れていて不法移民が隠れるには最適な場所になっていた。
 その場所で古びた白のピックアップトラックに積まれた大量の爆弾が人が集まる昼時に大爆発したのだ。
 
 前日の夜中にトーマス議員の息子がレストランの前に車を止めて立ち去り、爆発時刻をセットし爆発させる単純なテロ行為だった。
 
 州の人たちは多数の死者が出たにもかかわらず、場所が場所だけに、それほど関心はなかったが、移民たちはもうすでに暴走していた。
 それに目を付けた民進平和党のスミス議員が与党をコケおろして移民たちを味方につけた筋書き通りだ。

「まずくなってきたな」
 SIDの本部のモニターであちこちの防犯カメラを見ているが、暴動で町が荒れている。
「これは自作自演......」
 シャロンが呟いた。
 その瞬間にケインが眉間にしわをよせたのは、シャロンの未来が見える直感だと気づいたからだ。
「なんてことをしてくれたんだ!どうする?俺も現場に行かせてください」
 スチュアートが言った。
 市警の者たちはすでに出て行った。
「そうだな。ステュアート、向かってくれ」
「了解」
 スチュアートが本部を出て行った。

「しかし、チャイニーズシティは防犯カメラが少ないね。隠し事が多いからなのかな。自分の故郷を愛せないのかね。移民してくるとは。難民や不法移民じゃないだろうな」
 分析官のリョウがため息をついた。
「みんな何かしらの事情があるんだろ。あの町は民進平和党の町だからな。悪の親分を倒さなければならんな」
 ケインがモニターを見上げ腕を組み考え込んだ。
「その後、何か移民捜査局の動きはないか?」
「もう一度ハッキングしてみます。えっと……待って。やはり、不法移民の件で今、カナリア新教を極秘で捜査していますね」
「そうか、先に何とかしないとな。でも、自作自演で仲間を殺すのか」
 
 そこまでするとは考えもしなかった。もはや、仲間ではないのかもしれない。

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登場人物紹介

シャロン。(前作ではSHIHOとして潜入捜査)特別捜査部処理課 特別捜査官。幼き頃の治験薬が原因で記憶が曖昧なままだ。その反面、直観力が研ぎ澄まされている。

ケイン。特別捜査部処理課SID ボス。知事の下で動いている。シャロンの親代わり。

スティーブン。(前作ではジョンとして潜入捜査)特別捜査部処理課 特別捜査官。ケインの右腕。前回、シャロンと潜入捜査をしていた元コンビ。

正義の為なら殺しは辞さない。

創一郎。製薬会社 社長。シャロンの元恋人。互いに恋人時代の記憶を失くしている。シャロンと共に幼き頃、治験された過去がある。

スチュアート。特別捜査部処理課 特別捜査官。単純な性格。

マリア。特別捜査部処理課 特別捜査官。

州知事。特別捜査部処理課を創設。州の為なら何でもする。

レイチェル。シャロンと血のつながっていない妹。

そうじ屋。通称ブラック。スティーブンの仲間の殺し屋。

長官。

ミラー。自称カウンセラー。

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