空中要塞
文字数 2,609文字
《飛鳥》同盟、飛鳥隊長から通信がきて、メガネは一瞬、失っていた意識を取り戻した。
飛鳥のダークブルーの<ボトムストライカー>が、白銀色のメガネ機を支えてくれてるのが視界に入ってきた。
通信を接触秘匿回線に切り替える。
ようやく訊きかえしたメガネに飛鳥が答えた。
そこは空中要塞と化して飛行中の《YUKI no JYOU》同盟の本拠地<立花城>の上であった。
全長10キロにも及ぶ空中要塞<立花城>には、5キロ後方の≪メガロポリスの虎≫同盟の鬼虎先遣隊と≪YUKI no JYOU≫同盟の<龍騎兵>隊の戦場も含まれていた。
《飛鳥》、《飛礼》同盟残存の89機の<立花城>天守閣攻略部隊は、突然、舞い上がった空中要塞の天守閣付近で何とか体勢を立て直したところだった。
<立花城>を守備している龍騎兵隊も、城門の前で100機が臨戦態勢になっている。
メガネは自分の作戦ミスを嘆いた。
<立花城>が空中要塞となることは流石に想定外だった。
副隊長のガゼルは笑いながらいう。
飛鳥はゆるやかな摺り足で、ダークブルーの<ボトムストライカー>を無造作に進ませる。
<龍騎兵>隊100機は鶴翼の陣で展開していたが、虚を突かれてとっさに反応できない。
200メートルぐらいに接近されて、ようやく、翼龍に騎乗した<龍騎兵>隊が舞い上がったと思うと、上空から必殺の《龍槍》で飛鳥に襲いかかってきた。
飛鳥は風が舞う様に、ふわりとそれを避ける。
ゆっくりと抜刀すると、突きだされる《龍槍》を次々と両断してさらに進む。
次々と襲いかかる<龍騎兵>隊であったが、その攻撃はことごとく受け流されるか、微妙にタイミングと間合いを外されてるようだった。
止まったかと思うと、突然、動き出すような飛鳥の動きに翻弄されている。
飛鳥は舞う様な足取りで独特のリズムで大手門に近づいていく。
あまりにも無造作に動いてるようにみえて、絶妙のタイミングで敵に対応する。
風に舞う花びらのような変幻自在な動きである。
そして、一度、聖刀を鞘に納め、一瞬、制止した。
それは、ほんの瞬きするような瞬間の出来事であった。
次の刹那、城門を守っていた<龍騎兵>隊20機が一斉に倒れた。
何が起こったのか、誰にも分からない。
だが、飛鳥の黒い聖刀は鞘にまだ納まっていた。
メガネはようやく、事の真相に思い当たった。
相変わらず、何が起こってるのか、目で捉えることはできないが、それ以外、考えられなかった。
と、声を絞り出すのが精一杯だった。
飛鳥は無造作に城門に近づいていく。
殺到する<龍騎兵>、さすがの飛鳥も容易には近づけない。
攻撃を巧みによけて、前線に留まる。
その時、メガネがブレードローラーを全開にして突進、<龍騎兵>隊の前に躍り出た。
そして、ゆっくりと抜刀する。
得物は<水龍剣>である。
聖武天皇の御剣で正倉院に伝えられているが、明治5年の宝物修理の際、明治天皇が魅了され、お手元に取り置いたと言われる。宮内省御金物御用、明治金工界の巨匠、加納夏雄によって水龍文の拵えがつくられて<水龍剣>と呼ばれるようになった。
<刀剣ロボットバトルパラダイス>においても、超レアアイテムであるが、≪殲滅刀技≫が使用可能な聖刀でもある。
至近距離から、大手門に向かって、巨大な水龍が現れて打撃を与える。
攻撃力70万の<水龍剣>の威力で数十機の<龍騎兵>を巻き込んで城門は破壊され、飛鳥の前に道が開けた。
メガネが答える。
飛鳥はまたも不思議なステップで前進する。
大手門を突破し、三の丸へと侵入するが、敵の姿はない。
メガネ機もそれに続く。
《飛鳥》、《飛礼》同盟残存機は全機、突撃して、追跡しようとする<龍騎兵>隊を足止めする。
凄まじい乱戦になった。
一方、三の丸から二の丸に上がった所で、いきなり斬撃が飛鳥を襲う。
すんでのところで
飛鳥の眼前に、真紅の<ボトムストライカー>が十字槍を構えて立ち塞がっていた。
真紅の<ボトムストライカー>が十字槍を振るって、飛鳥を襲う。
が、飛鳥はふわりと鳥の羽のようにかわして、本丸に向かう。
なおも追いすがるマリアの十字槍を、メガネは<水龍剣>で受けた。
マリアは苦笑しながら間合いを取った。
メガネも後ろに跳んで、<水龍剣>を鞘にもどす。
(あとがき)
何かあっさりすぎますが、こんなもんでしょうか。