オトナの事情
文字数 2,593文字
飛騨はあいかわらず、黒のサイバーグラスをしていて表情は読み取りにくいが、この日ばかりはさすがに解放感で顔がほころんでいた。
舞もピンクのサイバーグラスをしていたが、お互いにその件については触れないのは暗黙の了解になりつつあった。この世にはとても気になるけど触れてはならないものがあるのだ。
表情は分からないけど、飛騨の口元が微妙に歪んだように見えた。
飛騨らしい、かなりマニアックな話題である。
こういう話をしている時の飛騨は饒舌である。
根からの古代史ファンなのね。
何か歴史談義のようになってしまったわね。
何の話をしてたんだっけ?
とはいえ、一か月の予定だった飛騨の休暇は二週間で終わりを告げることになる。
嵐の前の静けさの中、ふたりは夜更けまで飲んだ。
それが幸せな日々だったことを知るのはもう少し後の話である。
(あとがき)
『聖徳太子の
この短編連作シリーズのラストシーンも浮かんだし、何とか完結しそうです。
神沢優は『匿名捜査官タグ』で活躍してます。
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次回、第七話は予定変更で『幻視』というタイトルになりそうです。