帰京
文字数 1,303文字
運転席の中央にアームで固定されたタブレットパソコンから神楽舞の声が聞こえた。
スカイプ経由で通話ができるように設定してあった。
京都に着くには、まだ、一時間ぐらいはかかる。
飛騨は少し焦った。
気休めに過ぎないが、冗談めかして警告してみる。
幻視した光景の話をするわけにもいかないし。
通話を切ると飛騨はさらに車の速度を上げた。
幻視がどれぐらい先の未来かは飛騨にも分からないが、その兆候はすでに見えているように思えた。
数分後、舞から再び通話がきた。
最初の幻視の出来事が起こってしまった。事態は急速に悪化している。
飛騨の額に汗がにじむ。
舞は冗談めかして茶化してくる。
いや、それ、死亡フラグに見えるんだけど。
飛騨は嫌な予感を振り払うようかのように
その時、ドアを開けて何者かが踏み込んでくる足音が聴こえた。
続いて、数発の銃声と悲鳴が上がる。
誰かが倒れる音がした。
返事はなかった。
飛騨はアクセルをさらに踏み込んで高速をひた走った。