来世で愛し合おう
文字数 1,027文字
ボクと彼女は愛し合っている。
しかし、ボクたち二人は結ばれる事のない運命だった。
そして、二人は永遠の誓いをたてた。
生まれ変わっても、相手を見つけ出し、また愛し合おうと。
そして、ボクは今回の生涯を終えた。
彼女と愛し合える来世を願い……。
* * * * * * *
ボクは転生した。
そして、青年になるにつれ前世の記憶も明確に蘇ってきた。
いつか会える彼女に胸を膨らませ、彼女に見合う男性になろうと、勉学や筋トレなどを日夜努力した。
そして、運命のその時が突然やってきた。
前世の名前をボクに呼びかける声。
ボクは驚きながらも、喜びに満ち溢れ、声のする方へ顔を向けた。
* * * * * * *
そこに立っていたのは、長身で巨漢、更に無理な若作りをした50代の女性だった。
前世の記憶の影響か、直感で目の前の中年女性が、前世の彼女だとわかった。
微笑みながら中年女性が、ボクの方へと歩み寄って来た。
しかしボクは、本能的に後退りしてしまった。
ボクの中で、何かが違うという感情が溢れ出してきた。
ボクの反応に、中年女性はショックの表情を浮かべている。
それでも、中年女性の歩みは止まらない。
50センチくらいの距離まで近づいたとき……ボクは本能的に逃げてしまった。
愛せない!!
心の中の第一声が、その言葉だった。
中身が前世の彼女でも、今の彼女の容姿ではボクは愛す事ができない。
ボクは前世の美しい可憐な彼女が好きだったんだ。
しかし……現実はあまりにも違いすぎた。
必死に逃げ出したボクの後を、彼女が追いかけてくる。
そこには鬼の形相があり、右手には包丁を持っていた。
* * * * * * *
どれくらい逃げ続けているだろうか……。
体力的には若いボクの方が上回っているはずだが、中年女性を振り切れない。
あの体格でなんという、走るスピードだ。
更に、その異常な執念にボクは恐ろしくなる。
しかも、中年女性は包丁を持っている。
ボクを脅すつもりなのか……それとも……。
疲れはて、建物の角で頭を抱えながら座り込み、いろいろと考えてしまった。
そのとき、不意に視界が暗くなった。
* * * * * * *
顔を見上げると、目の前に中年女性が立っていた。
中年女性は息を荒げながら、一言だけボクに告げた。
そして、中年女性の持った包丁がボクの胸を貫いた。
その後、中年女性も自分の首を包丁で切り、自殺した。
意識の遠のく中、ボクは後悔の念を感じた……。
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永遠の愛など誓わなければよかった……。