ヴァンパイアの国
文字数 1,441文字
ヴァンパイアが恐れられていたのは、もう昔の話です。
私が住んでいるこのベイルという小国は、人間とヴァンパイアが共存しています。
人口比率的には、人間7に対してヴァンパイア3という感じかな。
それぞれの人種で得意不得意を補って、友好的に生活しています。
例えば人間は昼間に働く人が多く、ヴァンパイアは夜に働く人が多いですね。
これを読んでいる人は人間が多いので、人間についての説明は省いて、ヴァンパイアの人達についてもう少し詳しく説明しますね。
まず、ヴァンパイアは太陽が苦手です。
これは有名な特徴なので、知っている人も多いですよね。
ヴァンパイアは太陽の光を浴びると、苦しみ、最悪の場合は灰になって死に絶えます。
でもこの点について、ヴァンパイアは遥か昔よりは怖がってはいません。
ヴァンパイアは産まれてすぐに、太陽の光を防ぐ免疫のワクチンを打ちます。
このワクチンを打つことにより、ヴァンパイアは太陽の光を浴びても苦しむことが減りました。
ただ、被害の症状が緩和されたくらいなので、昼間に外出するヴァンパイアは必ず専用のスキンケアを体に塗ります。
人間でいう紫外線のスキンケアクリームみたいなものですね。
そのスキンケアをすることにより、ヴァンパイアでも太陽の下で散歩ができたりもします。
毎年、最新技術で開発されたスキンケアアイテムが発売されるので、ヴァンパイアは太陽の光を怖がったりはしていない感じですね。
あと有名なところでいうと、十字架とニンニクですかね。
十字架の場合は、ほとんどのヴァンパイアは恐怖とは考えていません。
人間で先端恐怖症や集合体恐怖症とかを感じる人がいますが、ヴァンパイアの中に極稀に十字架恐怖症という人がいます。
その十字架恐怖症のヴァンパイアは、十字架を見るだけで嫌悪感や気分が悪くなったりします。
しかし、棒で十字にしただけな物には反応しないので、十字架のみが苦手な感じですね。
あとはニンニクですが、これは人間の食物アレルギーと同じと考えて良いと思います。
ヴァンパイアでニンニクアレルギーになっている人は、ごく少数です。
しかし、ニンニクアレルギーのヴァンパイアがニンニクを食べてしまうと、最悪の場合は死んでしまうので、こちらは十字架恐怖症よりは気をつけなくてはなりません。
そのため、この国では一部のレストラン以外ではニンニク料理はメニューにありません。
あ、そうそう。
一番重要な事を言い忘れていました。
ヴァンパイアは人間の血液が主食です。
これを知っている人は多いですよね。
しかし、ヴァンパイアが人間を襲い、直接人間から生き血を飲む行為は、この国の法律で禁止されています。
とくにこの罪は重く、終身刑になることもあります。
人間が殺人を犯す事と同等に考えて良いと思います。
この行為は、人間とヴァンパイアの共存関係を崩しかねない、危険な行為なのです。
そのため人間は定期的に献血を行います。
中にはボランティアで献血をする人間もいますが、多くの人間が一つのビジネスと考えています。
献血した量により、報酬が貰えるのです。
しかも、血液内の成分によりランクがA〜Eまで存在します。
Aランクが最高級の血液で、その分報酬も高くなります。
Aランクの血液は健康な人間から採取された血液なので、この国の人間は他の国の人間に比べ健康にも気を使う人が多いです。
そのため、この国の献血の量は世界一で、成人のメタボ率の低さも世界一なのです。
こういった事もあり、私達人間とヴァンパイアは、友好的な関係で今日も生活しています。