自己愛過ぎる、双葉さん
文字数 2,373文字
僕の名前は
特に目立った個性と物もなく、アニメやゲームでいうところのモブチャラのような存在だ。
そんな僕の人生で、生まれて初めての最大のイベントの告白を行っている。
相手の女性は同じクラスの
僕と違い華のある女の子だ。
性格はおしとやかで優しく、いつも爽やかな笑顔で周りの人を幸せな雰囲気にしてくれる魅力がある。
容姿は髪も綺麗で、肌も色白で美しく、整った顔をしている。
自分でも不釣り合いだとは思っているが、今まで平凡に生きていた僕は一大決心で告白をした。
双葉さんの第一声は、その言葉だった。
予想通りの返答だが、さすがにショックで僕は薄っすらと目に涙をにじませていた。
―――ん⁉️ それって、僕の告白を考えてくれてるって事だよね⁉️
まだ可能性があるってこと?
5分、10分、15分、と待っているが、双葉さんは考え続けている。
20分、30分、60分……、双葉さんは同じポーズのまま考え続ける……。
双葉さんは僕をからかっているのか?と思ったが、双葉さんはそんな事をする女の子ではない。
僕は何も言わずに待ち続けた。
80分、100分、120分……僕は二時間も待ち続けた。
そのとき、やっと双葉さんの口から言葉が発せられた。
そのとき、僕は生まれて初めての最大の幸福感を感じた。
―――と同時に、今後訪れるであろう慌ただしい日常を経験することになる。
* * * * * * *
僕達の交際は順調だった。
下校時には一緒に帰り、家ではスマホでメッセージや通話をし、週末にはデートをする。
僕としては幸福な1ヶ月が過ぎた。
そして2ヶ月目の週末のデートで、予想外な出来事が起きた。
昼間はショッピングなどを楽しみ、夕方の公園のベンチに座り会話をした。
夕日も徐々に沈んでいき、公園の街灯も付き始める。
周りには人気もなくなり、とても良い雰囲気になってゆく。
僕は勇気を出して、双葉さんの手を握った。
双葉さんは少し驚いた様子だったが、嫌がる素振りはみせなかった。
僕の心臓の鼓動が、双葉さんに聞こえるくらいドキドキしている。
双葉さんの顔をチラッと覗くと、色白の肌の頬が赤く染まっていた。
僕はそんな双葉さんが愛おしくなり、少しづつ顔を近づけキスをしようとした。
双葉さんも僕の行為に気付いたらしく、少しづつ顔を僕の方へと向けて来た。
さっきまで赤かった頬が、顔全体的に赤みをおびている。
僕は初めてのキスをした……。
―――と思ったら、思いっきり双葉さんに殴られた。
え?ええ?どういう事?さっきまで良い雰囲気だったよね……?
っていうか?この人だれだ?僕の知ってる双葉さんじゃないよ……。
お前は無害だと思ったから、付き合ったんだぞ!
それなのに、毎日毎日つきまとい!
週末はお前との為に時間を取られ、挙げ句の果てにはオレにキスしやがる!
オレはオレが大好きで、お前なんか好きでも何でのないんだよ!
なんだ今の返答、あまりにも変だ。
まるで自分でない誰かの為に、仕方なく僕と付き合ったみたいな言い方だ。
双葉さんの言葉は嬉しかったが、今までの流れが理解できない……。
そう言って、双葉さんは僕の腹にパンチをした。
僕は呼吸が困難になり、前かがみに跪いた。
どういう事だ? リンって双葉さんの事だよな?
双葉さんは自分自身の事を愛しているって事なのか??
すると、また双葉さんの表情が変わり、いつものような穏やかな表情になった。
ごめんね……綾瀬くん……私の中にはもう一人の人格、ゲキっていう男の子がいるの……
そのゲキは私の事が好きなの……でも、私は一度で良いから、男の子とお付き合いしたくて、ゲキが承諾してくれたのが綾瀬くんだったの……
……綾瀬くんと付き合ったこの1ヶ月間……最高に幸せだったよ!
こうして僕達三人の、変わった三角関係の恋愛が始まった。