VTuber蛇ノ目マヨイは男の娘‼️
文字数 2,365文字
VTuberとは、動画配信者が本人の姿で出演する代わりに、イラストなどの姿で出演します。
蛇ノ目マヨイは、蛇をモチーフにした可愛い女の子のイラストで、語尾に「ニョロ~」と付ける設定で演じています。
演じているのはボク、
男のボクは、蛇ノ目マヨイの時だけ、可愛い女の子になれるのです。
演じているというよりは、そっちの姿が本来のボクだと思います。
ボクは男ですが、男の人が好きで、女の子になりたいと思っています。
それに気付いてからボクは同級生の男友達を異性のように感じてしまい、ときにはドキドキしてしまいます。
ボクは誰にも相談できずに悩み、そのうち学校には行かなくなってしまいました。
不登校が続き、何もしていないボクはVTuberの存在を知り、自分でやってみようと思い、いろいろとVTuberの勉強をし高校2年生の夏に初配信まで辿りつきました。
女の子として配信をすると、自分の中の鎖が解けたように自由な感覚を覚えました。
そしてボクは、蛇ノ目マヨイという女の子になりきる事に夢中になっていきました。
現実とは分断されたこの生配信という仮想空間では、ボクは紛れもない女の子なのです。
最初は少なかった視聴者数も徐々に増え、増える事がボクのモチベーションを更に上げてくれました。
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ボクは他のVTuberの配信を見るのも好きです。
その中で特に好きなのが、魔人ロロ《まじんろろ》様です。
彼の見た目は狼の顔をした魔人という姿で、話す口調も荒々しくとても男らしいのです。
ボクとは真逆なそんなロロ様に、ボクは夢中になっていました。
ボクはSNSでの発信は、蛇ノ目マヨイでやっていました。
そして、大好きなロロ様のツイートにコメントを残したりもしていました。
蛇ノ目のファンの中には、男のロロ様へのコメントを良く思わない人もいましたが、このわずかなやり取りがボクの至福の時の一つだったため、止められませんでした。
しかし、ボクの大好きなロロ様ですが、実はあまり人気のあるVTuberではありません。
そのためボクのコメントがきっかけとなり、いつしかお互いがDM《ダイレクトメッセージ》で、直接メッセージのやり取りをする事になりました。
会話の内容はほぼVTuberとして、どうすれば視聴者数が増えるかと言うものばかりですが、そのやり取りだけでもボクはとても嬉しかったです。
しかし、事件というものは突然起きます。
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蛇ノ目のSNSに、ボクは自分のパソコン周りの写真を載せました。
不登校になり、リアルの友達がいないボクの部屋を知っている人もいないので、パソコン周りの写真を載せても身バレはしないと思ったからです。
しかし、載せてまもなく隣の部屋と一階のリビングから、ボクの部屋に向かう足音が聞こえてきました。
ドアが開くとそこには、2歳年上の姉の
ボクは何が起こったのかわからず戸惑っていると、お姉ちゃんと桜ちゃんもお互い顔を見合わせ戸惑った表情をしていました。
ボクは気を取り直し、二人に「どうしたの?」と訪ねました。
少し間があり、その後お姉ちゃんがスマホをボクに見せて、こう言いました。
お姉ちゃんのスマホには、ボクがさっきSNSに載せた写真がありました。
更に桜ちゃんもスマホを握っており、そこにも同じ写真が写っていました……。
その瞬間、ボクは血の気が引く感覚に襲われました。
誰にも知られたくない秘密を、家族に知られてしまったのです。
ボクが何も言えず放心状態になっていると、桜ちゃんが驚いた声を出しました。
ボクは何の事やらわかりませんでしたが、お姉ちゃんのスマホを指差す桜ちゃんの先には、ロロ様のコメントがあったのです。
確かにボクがSNSに載せる直前に、ロロ様はコメントしていました。
更に良く見ると、お姉ちゃんのSNSのアカウントはロロ様のモノでした。
今度は、お姉ちゃんが動揺し始めました。
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ボクたち3人姉弟はとりわけ仲が良くも悪くもありません。
ボクが不登校で引きこもりなので、二人とも常にボクに気を使っていることはわかっていました。
そのため、三人は微妙な距離感があったのです。
しかし、実は配信やSNSでは3人は深い繋がりがあったのです。
桜ちゃんは蛇ノ目とロロ様のファンで、良く生配信でコメントをくれていました。
桜ちゃんのハンドルネームは『クソガキ』でした。
元気な桜ちゃんらしいというか、どうしてそんな変な名前にしたのか不思議ですが、蛇ノ目もロロ様もクソガキのコメントに励まされる事は多かったのです。
お姉ちゃんがまさか、オラオラ系のロロ様とは思わず、ボクは笑っていました。
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それからの蛇ノ目とロロ様は配信でコラボなどをして、クソガキが面白いコメントをだし、それを二人が取り上げるというのが定番になりました。
そして、リアルの方でもボクたち3人は仲良くなっていきました。
―――その後、ボクはお姉ちゃんと桜ちゃんのおかげで、久しぶりに学校へ登校することができました。