第7話
文字数 509文字
堀木にとってたかひろは、生意気で、けれどどこか憎めないところのある年下の友人だった。
言葉遣いが丁寧で、一見謙虚に見えるが、しばしば他人を見下すような態度をとりがちな彼を嫌う者も少なくなかった。
しかし、そんな彼が自分を頼りにしてくれるのを、堀木は意外と素直で、可愛いところもあると思ったものだった。
けれど、だからと言って、あんな行為をして良い筈はない。
確かに、妻と別れてからというもの、女性とそういう行為に至ったことは殆どなく、人肌に飢えていないとは言い難い。
その上、あの晩はかなり酔っていた。
己の卑しい性欲のはけ口を、たかひろに求めたことは間違いない。
堀木は、あの日の晩の、たかひろの痩せ気味の身体、なめらかな肌の感触を思い出しながら、自分の行為がまだ信じられない気持ちだった。
いくらなんでも、たかひろを女と間違えるほど酔ってはいないはずだ。
たかひろを愛してる、だって?
俺は男が好きなのか?
わからない。
いずれにしても、あいつは二度と俺に会ってはくれないだろう。
己の身勝手な欲望でかけがえのない友人を失ったことは、堀木にとって、妻や娘が家を出て行った時よりも辛く、悲しく、そして淋しい気持ちだった。
彼は本当に孤独だった。