第8話

文字数 444文字


たかひろから再び連絡が来たのは、あの日から10日以上たってからのことだった。

夕方、堀木が仕事を終えて帰宅しようとすると、スマートフォンに一本の着信が入った。
たかひろからだった。

「先日、お金を多めに渡しましたが、自己破産の手続きはしましたか?」

「いや、まだ…」

「もしかして律儀に借金を返そうなんて、また馬鹿なこと考えてるんじゃないでしょうね。
どうせそんなことできやしないんだから、モタモタしてないでさっさと手続きしてください」

「ありがとう、本当に助かるよ。
心配をかけて済まなかった。
ところで、俺もお前に話したいことがあるんだ…」

「必要のないことは喋らないで下さい」

たかひろはそう言うと、一方的に電話を切った。

無理もない。

本当なら、一言も口をききたくない筈だ。

それなのに、あいつは俺のことを心配して電話してくれた。

あいつはあまのじゃくで、いつも人の神経を逆撫でするような態度をとってばかりいるが、根っこは優しくて、思いやりのある人間なのかもしれない。

俺はお前の、そういうところが好きなんだ…。



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