第6話
文字数 624文字
翌朝目を覚ますと、堀木は先に起きて台所でコーヒーを淹れていた。
腰と後ろの穴が痛む。
昨晩、たかひろは堀木に最後まで犯された。
その事実はたかひろの心に暗い影を落とし、この屈辱を何とか晴らしてやりたいと決意した。
「勝手に台所借りて悪かったな。
お前、ブラックでよかったよな?」
堀木はマグカップを差し出して言った。
たかひろは黙ってマグカップを床に叩き落とし、そのまま部屋を出ていった。
割れたマグカップと、床に零れ落ちたコーヒー。
覆水盆に返らず。
たかひろの部屋に取り残された堀木は、コーヒーの染みが広がっていくのを、ただぼんやりと眺めていた。
30分後、たかひろが部屋に戻ると、堀木はその巨体をしょんぼりと縮こませて台所の椅子に座っていた。
割れたマグカップとコーヒーはきれいに片付けられていた。
「たかひろ、お前には本当に申し訳ないことをした」
堀木は土下座して言った。
たかひろはその光景を冷ややかに眺めていた。
そして、堀木の頭を思い切り踏みにじった。
「あなたが僕にしたこと、謝れば済むとでも思ってるんですか?
人の気持ちを踏みにじりやがって。
金だけ持って出て行け、豚野郎」
たかひろは堀木の顔面に向かって札束を投げつけた。
100万円前後はあったろうか、その札束は床に舞い散った。
床に落ちた札束を黙って拾い集める堀木の姿を、たかひろは腕を組んで見下ろしていた。
そして、この光景を眺めながら、己の中で加虐的な嗜好が頭をもたげつつあることを、たかひろはまだ知る由もなかった。