第13話
文字数 427文字
「愛してるよ、たかひろ…」
堀木がたかひろを抱いている時、彼はいつも耳元で愛の言葉を囁いた。
普段から憎まれ口ばかり叩いているたかひろが、この時だけは黙って恥ずかしそうにはにかんで頷くのが可愛らしく、愛しいと思っていた。
このまま夜が明けなければいい、ずっと彼に触れていたい、抱きしめていたいと堀木はいつもそう思いながら、たかひろとのつかぬ間の時を過ごしていた。
時折、たかひろがふっと淋しげな表情を浮かべていると、堀木は悲しい気持ちになり、黙って肩を抱き寄せるのだった。
愛しているといえる根拠。
それはたかひろの心に寄り添い、そして触れていたいという気持ちひとつだと彼は思った。
たかひろにはいつも笑っていてほしい。
堀木はたかひろを旅行に誘うことにした。
たかひろの心の内全てを知ることはできないが、せめて、彼の気分が少しでも晴れるといいと思ったのだ。
たかひろは少し戸惑ったように笑って、「あなたが行きたいところがあるなら行きます亅と言った。
こうして二人は旅立った。