第12話
文字数 710文字
膝の上で甘える堀木の背中を優しく撫でてやりながら、たかひろは堀木に初めて体を奪われた日の夜から今までのことを思い返していた。
あれから数年、彼を何度も辱め、辱められるうちにお互いに離れられなくなっていた。
互いが互いを知り尽くし、もうそれでしか満たされなくなってしまったのだ。
もちろん妻のことを愛していたし、自分は同性愛者ではないと信じたかった。
全てはあの日の晩から狂わされてしまったのだ。
たかひろは堀木の肛門に触れた。
「ああ……ちょっと……さっき後ろ触りたくないって言ったばっかじゃん……どうしたの、急に……」
堀木は腰を震わせながら言った。
「気持ち悪い声出すのやめてもらえませんか」
たかひろは堀木の顔面をはたきながら、その細くて長い、しなやかな指を一気に奥まで突き立てた。
堀木のペニスは今にもはち切れんばかりに隆起している。
たかひろが指を動かす度に、腰を震わせながら女のような喘ぎ声を出す堀木の姿を見て、彼はこの上なく幸福だった。
堀木から男としての尊厳を奪っているという征服感。
それだけが彼を満たされた気持ちにさせた。
たかひろは時折、堀木と別れたいと思うことがあった。
堀木は自分を愛してくれていたが、自分は堀木を辱めたいだけで、愛してはいない。
自分が昔受けた屈辱を晴らしたいという気持ち以外に彼に対しては何も持ってはいなかったのだ。
それに気づいた時、たかひろは自分たちの行為がとても虚しいことのように感じられた。
自分の加虐嗜好、堀木との関係、妻への罪悪感―。
これら全てが彼の壁となり、その中で彼は孤独感を深めていった。
やがて、その壁を取り払うには、堀木に死んでもらうよりほかないのではないか、と思い詰めるまでになっていた。