第16話
文字数 266文字
堀木はたかひろを抱きかかえると、近くの雑木林の中へ入っていった。
土と木の香りが入り混じった、爽やかな匂いがする。
彼は青々と茂った広葉樹の根元にたかひろを横たえた。
「苦しい思いさせてごめんな、たかひろ…愛してるよ」
白く透き通った肌、長いまつ毛と潤んだ唇。
たかひろは本当に眠っているかのように、静かに横たわっていた。
これは彼の額に口づけると、静かにその場を去った。
二人で渡ろうって言ってたのに。
彼は一人で、ゆっくり吊り橋を渡っていった。
川のせせらぎは穏やかで、きらきらと反射する光が眩しかった。
一滴の涙がこぼれて、谷底へと消えていった。