第1話 電気ポット

文字数 555文字

今朝、お湯を沸かそうとした。
お湯を沸かす…火を使う、熱くする。
そう考えて、ガステーブルの上に電気ポットを置いた。
もちろん、電気ポットの中に、水を入れて。

でも、おかしい。ポットの底が、溶けて、変な匂いがした。
どうして? どうして? ポットの底ら辺が、焼けてしまった。

娘が、「お母さん、これ火にかけちゃダメじゃない!」と言う。
「これで二回目よ」とも言う。
そうだったかしらねえ。

ヤカンなら、火にかけていいんだ。
で、ヤカンに火をかけた。
ヤカンなら、間違いない。

電気ポットをダメにして、二日後のこと。
また、台所から焦げ臭い匂いがした。
火にかけたヤカンに、水が入っていなかったのだ。

ああ危ない、おお危ない。

ヤカンなら、火にかけていいと思う。
電気ポットは、火にかけなかった。
何も間違っていない。

ただ、水を入れ忘れただけなのだ。

些細なミスだ。
たいしたことではない。(?)

生きるってことは、危険がいっぱいなのだ。
ゴミ箱の中に、カーペットの裏に、引き出しの奥に、
危険がいっぱいあるものだ。

生きているということが、立派な奇跡だ。
ずっと、その奇跡を続けて、今に至っているのだ。
なにものかによって生を受け、
なにものかによって生を終える。
それまで、奇跡の連続だ。

実感できる、「生きている」ことの連続だ。
なるようにしか、ならない。なれない。
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