第17話 時ならぬ雨 ―郁人side―

文字数 1,286文字


 まこっちゃんはよく、ボーナストラックって言っていたけど、おれもじつはそうなんだっていったらどんなかおするかな。ほんとうは7ねんまえにはんにんがきたとき、おれもママといっしょにほしになるはずだった、っていったらびっくりする?

 おとーさんにはとんでもないけどこんなことはいえないな。だって、ぜったいないちゃうもん。おれがママのはなしをしようとするとめになみだをいっぱいにしちゃうんだ。かおをしわしわにしてないちゃう。おれはそれをみたくないんだ。

 おとーさんにはひみつだったんだけど、おれにはママのこえがきこえる。
これをいうと、ゆうれいがみえるみたいにおもわれたらいやだから、だれにもいったことないんだけど、ほんとうにずっときこえてた。ときどきうっかりへんじしちゃいそうになるんだ。

「郁人っ! ちゃんと歯磨きしなさいっ、お父さんの言うこと聞きなさい」って。

だから、おれはママのことはママって呼ぶけど、おとーさんのことはママがずっとおとーさんて呼ぶから、パパってよんだことがない。おとーさんはてきとうだからそんなこと、きにもしたことなかったみたいだけど、まこっちゃんはきづいてた。おれはそれをきかれたときしんぞうがすごくドキドキしたんだ。なんてこたえようって。まさか、ママがそうよんでるから、なんていえないよね。

 おれのボーナストラックってやつはあと二ねんしかないらしい。
 ママがときどきさびしそうなこえでいうんだ。

「郁人、もう少しお父さんと一緒に居させてあげられなくてごめんね」
ママにはどうしてそんなことがわかるの?
「ママは郁人より先にお星さまになっちゃったから、分かるの。でもこっちに来たらママと一緒に居られるから寂しくないよ」
さびしくない? ママといっしょになの?
「そう、ずっと一緒よ」
じゃあ、おとーさんと、まこっちゃんはどうなるの?もうふたりにはあえないの?
ママはこのしつもんをするとへんじをしなくなる。
ママ?ママ?いるの?
「いるよ。少しの間、お別れするだけよ。また会えるようになるから。みんなお星さまになるからね」

みんな、おほしさまになるのか。じゃあ、みんないっしょにいられるね。

 おれはホッとした。
よかった、いつかみんないっしょにすごすことができるんだね。
ママ、おほしさまになるひはえらべるの?

「どうして? 何か理由があるの?」

おれはおとーさんがあめの日がキライでこわがっていることをしっている。あめのひのおむかえはいつもクルマなんだ。そして、ぜったいあめにぬれたがらない。あめのひはあたまがいたいってよくおくすりをのんでいる。なきむしなおとーさん。

おれ、はれた日におほしさまになりたいな

そうすれば少しでもおとーさんのあめギライがよくなるかな。でも、やっぱりおれがいなくなっちゃったら、ないちゃうかな。かおをしわしわにして、ないちゃうだろうな。おとーさんがないちゃうのはいやだな。

おれの、なきむしおとーさん。
あめなんて、そらからふってくるだけの、なんでもないみずなのにな。


ー完ー
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