慄き(おののき)の日

文字数 479文字



「キャー!!!」

恐怖に慄く(おののく)人々の叫び声が響き渡った。


人生の高みに上り詰めた人間は、


いずれ地の底に突き落とされる時が来る事を、


人々は知っておくべきだったのだ。


太陽ですら、


夜が訪れると地平線の下へと落ちていく。


その太陽を回る惑星に過ぎない地球に住む人間が、


その運命を避けられるはずは無い。


知っておくべきだったのだ。


恐怖に喚き泣き叫ぶ前に・・・


穏やかな時代に見せていた穏やかな笑顔は、


恐怖に慄(おのの)き、絶叫する人々の表情から消え去っていた。


些細な事でも楽しかったあの日の出来事など、


今となっては思い出すことすら叶わぬ。


今の私に出来ることは、


「人々が再びあの穏やかな表情を取り戻すことが出来るように・・」


と願う事だけだ。


私の隣にいる、まだ穏やかな彼女が、私に言った。


「ねえ、あれに一緒に乗ろう。」

「絶対無理。」

「弱虫。」


あえて恐怖に慄(おのの)こうとする人々の心境を、私は理解できない。


私の隣にいるまだ穏やかな彼女は再び



「弱虫。」


と言った。



休日の晴れ晴れした遊園地の

ジェットコースター前にて、あえて言おう。


「弱虫の方が長生き出来るのだ!」


と。



おしまい
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