風が吹くと爺ちゃん喜ぶ

文字数 1,222文字

               私が小学3年生の時に、


                 授業で描いた絵が、


              小学校内で毎年開かれている、


              絵のコンクールで金賞を獲った。



                自分で描いた物だが、


                どう贔屓目に見ても、


            上手いとは言いがたい作品だった。



          どちらかと言うと下手な絵に部類している事は、


        小学3年生で絵の才能の欠片もない私にも分かった。



                 受賞理由を聞くと、


           絵の中のポプラの木が風にそよいでいて、


           「小学3年生で風を表現した事は卓越してる」


                  と言う理由らしい。


 

              絵を見ると確かにポプラの木が、


          風にそよいでいるように見えなくもなかった。



            私は「ただ風が吹いていただけじゃん」と、


           その程度の受賞理由で金賞を獲った事が、


                あまり気に入らなかった。


             とは言え、入院していた爺ちゃんは、


          何かと出来の悪い孫の快挙に大喜びしてくれた。



                 看護婦さんの話によると、


              お見舞いに来た私たちが帰った後も、


                 ずっと眺めていたらしい。




                       

                      風が吹く  


                        ↓                    


                    ポプラの木がそよぐ


                        ↓           


            それを見ていた出来の悪い孫がそのまま描く


                        ↓


            絵の審査員が「小学3年生にしては凄い」と思う


                        ↓


                 出来の悪い孫金賞を貰う   


                        ↓                     


                    爺ちゃん喜ぶ

                           

       


                  「気のいい風の神様が、


           気まぐれで吹かしてくれた風なのかもしれない」                     


                    と、ふと思った。


                       おしまい
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