地下牢の姫君への手紙

文字数 800文字



1通目の手紙 

親愛なる姫君へ

選りすぐりの忍びの者を、姫君の救出に向かわせました。
もうしばらく、裏切り者に乗っ取られたその城の、地下牢でどうかご辛抱ください。

                      姫君の忠実なる家臣より

2通目の手紙

親愛なる姫君へ

地下牢から帰還した忍びの者より、事情は聞きました。
姫君の仰せのとおり、
至急、身長が平均より高めの栗色の髪で、甘い顔立ちの青年を探し、
姫君を救出するための訓練を急がせます。   

姫君のご趣向に合わない、あのような厳つい顔の忍びを救出に向かわせ、
私の配慮が足りなかった事を、お詫び申し上げます。


                      姫君の忠実なる家臣より



3通目

親愛なる姫君へ

地下牢より帰還した、身長が平均より高めの栗色の髪で、甘い顔立ちの者より事情は聞きました。

地下牢の牢番と恋に落ちたとは、如何なる事とです?
「私は優しき牢番と、この愛の地下牢で一生を過ごす。」
などと、由緒正しき姫君の仰る事とは思えません。

姫君は澄み切った空も下が、最も良く似合うお方です。
どうか、お考えなおしください。

                      姫君の忠実なる家臣より


この手紙のやり取りから数年後、姫君の忠実なる家臣に率いられた軍勢により、城は陥落。
姫君は地下牢から救出された。
 

姫君の忠実なる家臣は

「姫君ともあろうお方が、何故あのような者と恋仲になられたのです?。」
 と姫君に聞くと、姫君は「解らぬか?」とでも言いたげな目で、一目忠実な家臣を見ただけで、何も答えなかった。

 この姫君と恋仲になった牢番が、後に疲労した王国を立て直し中興の祖と称えられる王、俗に言う牢番王である。

 姫の忠実なる家臣は、かつての繁栄を取り戻した城を、歩きながら
「あの湿った地下牢で、危険人物で敵の囚人に過ぎない姫君と恋仲になるなど、ただ者ではなかった。と言う事か。」
と呟いた。


おしまい
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