第1話 猫を飼おう

文字数 1,616文字

私は夫と2人暮らしである。
晩婚で子供はいない
それでもせっかく家庭を築くのだから2人ではなんだし
私も夫も猫が好きなので猫でも飼いたいねぇという話は以前から出ていた

私には犬猫を飼った経験がない
一番近いのはミニウサギかなと思う
10代の頃の話だ

そのミニウサギはピーターという名前だった
雄のウサギで彼は15年生きた
ミニと言いながら立派に成猫サイズに育っていた

妹が溺愛して世話をしていたのだが、私は彼にとってただの同居人でただの障害物で、なんなら嫌われていた
ベランダが彼の縄張りで妹の足には求愛行動さえするのに
私は洗濯を干してるだけで飛び掛かってきて噛みつくのだ。
たぶん私が怖々接していたので彼としても飛び掛かるしかなかったのだろう

それに母が犬を飼った経験があるそうで死んだ時にとても悲しかったから犬猫は飼わないと頑として言い張っていた。
犬猫とウサギはどう違うのか分からないが母の言う通り犬猫を飼うことはないだろうと思っていた。
しかしながら大人になり、私が猫を飼うことになるとは人生わからないものだ

夫と「猫を飼いたいねぇ」という話になり
住んでいたところはペット不可だったのでずっと頓挫。
昨年末、真剣に考えてみようということになり
年始から家探し、その翌月には引越しすることになった。

それと並行してじゃあ猫探しも!と私は意気揚々と猫の探し方についてまずは検討する

そういえば昔、猫カフェに行ったことがあったのを思い出した
あれは奈良だっただろうか。
ならまちで猫カフェ。
なんで奈良まで行って猫カフェに行ったんだろう
その時一緒だった友人と成り行きでそうなったんだったろうか

なるほど、
まずは猫カフェで実際に猫を見て考えてみよう
そう思い、猫カフェのありかを調べ夫と行ってみることに。

そこはペットショップに併設された猫カフェだった
いろんな種類の猫たちがゲージに入れられているだけでなく客の前に立ち営業活動をするのだ
並ぶゲージの中の猫たちを見ながら私はワクワクした

しかし、しかしだ
ようやく順番が来て入室してみると
4、5匹の猫が部屋の中にいてそのどの猫もなんだかぐんにゃりしているのだ
座った目をしてぐんにゃりと寝そべっている
それも客である私たちの間合いを取り、手が届かないところに。

プロだな

私は思う。
手を伸ばすがなかなか触れ合えない。
たまに寝そべるのに飽きたのかふらりと通り過ぎる猫を触ることはできたが
通り過ぎるだけである。
おもちゃを目の前で振ったりしてもけして気にも留めない。

どうしたものかと思っていたら私たちの前に部屋に入っていた父と娘が目に入った。

小学低学年くらいのその女の子が猫を抱いているのである
いいなあと思ってみてたがなんだか変だ
その抱き方は羽交い締めといったもので
猫を背後から両手でしかと抱き、猫はその下ににょろんと伸びているのである
そして明らかに嫌がっている

私は猫カフェに入る前に散々注意書きに目を通していた
「猫に触れてもいいが無理矢理抱いたりしないこと」

まあそこまではよくあることなのかもしれない
問題なのは女の子の呟きである

「逃げたら殺す、逃げたら殺す」
そう呟きながら猫を抱えて左右に振っているのである
猫は嫌がってはいるもののもがいても離してもらえないことに観念しているのか
ぐんにゃりと伸びていてそれでもたまにもがいた

怖い

父親は隣で足を組んで座りスマホをひたすら触っている
娘に気を配る様子もない

なんだここは

ぐんにゃりとした猫たちは抱かれている猫も含め全く生気がない

なんだかとても辛くなり、私は夫にそっと「もう出よう」と言って
1時間のところを30分で切り上げた
レジでスタッフの人にほんとは途中退出はダメなんですけどね〜なんて言われながら店を出る。
途中退出よりおかしなことが沢山あるぞ君
私は申し訳ないが心の中でそう思いとても疲れた気持ちで家に戻った。

猫を飼う、
これはなかなか大変なことなのかも
私の猫に対するモチベーションは、そこで少し挫けるのでした

続く






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登場人物紹介

人①(私)

人②(夫)

猫①(キコ)

茶白

人という字の前髪

尻尾が長い、直毛

可愛いというより美人タイプ

性格:不思議ちゃん、ツンデレ

猫②(モコ)

茶白、背中に羽

オンザ眉の前髪

鍵尻尾、ふわふわ毛質

丸顔、可愛いタイプ

性格:おっとり、マイペース

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