第2話 猫カフェ再び

文字数 2,086文字

さて。
それからしばらく第1話の経験について悶々としたのち
もう1つ街中で見かけた猫カフェに行くことにした

それは保護猫カフェというもので譲渡型とも書かれている。
なるほどそんなのもあるのかと思い、傷が癒えた頃、私は夫と一緒に向かった。

そこはゲージもあったが基本的に一部屋にすべての猫がまとめられていた。
一部の子猫は部屋の外を走り回っている。
部屋の中には大きな猫たちがうろうろしているのだ。
それも総勢20匹はいるだろう。
ペットショップの猫カフェとの違いをまず感じる。

そして大きな違いはさらにあった
猫がイキイキしているのだ
猫同士が取っ組み合ってじゃれ合ったりお客さんの猫じゃらしで踊らされていたり
眠い子は床やソファやキャットタワーの上で自由に寝て起きてうろうろしている
その猫たちがみんなイキイキしていて毛並みさえきれいに見える。
一言で言って活気があるのだ。

なに
これが普通?
いや、どれが普通かわからないぐらいの初心者だもんで
私はこれだよこれと心が躍った。
レンタルの猫じゃらしを借りてソファに座る
猫たちが周囲をうろうろ歩いている。
猫じゃらしに絡んでくれる子もいれば、すんと無視して歩いていく子もいる。
それでもたくさんいる猫たちにほかのお客さんたちも楽しそうな笑顔が見えた。

一匹、私たちに近寄ってくる猫がいた
その猫はわいんちゃんと名付けられていて片目が白濁した猫だった
保護猫ということは元野良猫で何らかの事故か病気で片目を痛めたのだろう
わいんちゃんは私の猫じゃらしで遊び、私の膝に乗り、私の傍らに寝そべりうねうねと体を擦り付けている。
なんてかわいいんだ。
私はでれんでれんになっていた。

「こうして営業活動しているんだよ」
夫がそう言った。
実は彼は実家で保護猫を飼っていた経験者なのだ。
猫は飼ってほしくてこうしてうねうねして営業活動をするというのだ。
そうなんだ…
夫曰く、集団生活は猫にとっても大変で自分の家が欲しいと思うというのだ
わいんちゃんはその身なりを持って自分を選んでもらえるようにうねうねと甘えて人間を虜にすることで営業活動をしているのだろう。
私は少し切なくなってきてしまった。野良生活を思い、苦労したんだなと思った。
そうしてしみじみと、私は保護猫を飼おうと心に決めた。

45分ほどの滞在時間が過ぎてこの猫カフェを後にしたが
このわいんちゃんのことはしばらく心に残っていた。
その後、家探しをしたりしているうちに時が結構過ぎ、
また再来した時にはわいんちゃんはいなかった。
というのもこのお店はInstagramをやっておりずっとチェックしていたが
どうやらわいんちゃんは白濁した目の治療のためしばらくお休みしているとのことだった。
数日してわいんちゃんの目は全摘出せざるを得ない状況であることが分かりその小さな体は手術にかけられるとのことだった。

そうして私の方もしばらくご無沙汰した後にまたその猫カフェに行ってみたがやっぱりわいんちゃんはいなかった。

今回、私は噂のちゅ~るとやらを猫たちにあげてみたいと思い、ちゅ~るを受付で買い求めた。その日にいたのは元気いっぱいの小柄な猫たちで、ちゅ~るを開けるやいなや猫殺到で3,4匹の猫に囲まれた。
ちゅ~るは一本だ。
そんなに一気に来たって無理であろう。
私は驚いて必死にちゅ~るを差し出していたが猫たちの舌が同時にべろんべろん重なりちゅ~るはぼとぼとと私の服に落ちる。私は夫に代わってもらってティッシュで拭き取るがちゅ~るは何でできているのかすっとは服から取れてくれない。ねばこく繊維に絡みつき、水をつけて叩いても無駄だった。
帰宅後の話だが、洗濯洗剤で手洗いで洗ってもだめだった。何かついているという痕跡が残った。猫は飛びつくは服からは取れないわ、ちゅ~るは噂以上のものだった。

「痛い、痛い」
夫の声に服を拭く手を止めたが夫の手は穴が開いて血が出ていた。
猫たちが興奮して手を噛んだらしい。
ちゅ~るはすでに空になっていて猫たちはもっともっとと言わんばかりべとべとになっていた夫の手に嚙みついたのだ。
見る見るうちに血は溢れて流れ出す。
私は絆創膏を携帯しているので洗って貼ってやった。
そうしてただの餌やり係になってしまった状態で今回は帰路に着いたのだった。
夫のテンションは非常に下がっていてあわわと思った。

その後、Instagramの覗き見は続き、
わいんちゃんは片目の全摘出を終え、眼帯をつけるかっこいい猫になっていた。
そしてどうやらわいんちゃんはあの日、お試しでどこかのお宅に行っていたそうで、
なんと正式に譲渡が決まったという。

片目のわいんちゃんを選んだ人がいる。
私は嬉しかった。そして少し残念だった。
しばらくして卒業猫の紹介ページにわいんちゃんを見つけた。
わいんちゃんは新しい飼い主さんの元で「十兵衛」という名前になっていた。
少しキリリとした目のわいんちゃんはスマートでそれはとてもよく似合う名前のように思えた。

わいんちゃん、お幸せに。

かわいく接してくれたわいんちゃんを思い、
自分にも飼いたいと思える猫ちゃんがこの先現れてくれるのか
この頃、全くそんな気はしなかった
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登場人物紹介

人①(私)

人②(夫)

猫①(キコ)

茶白

人という字の前髪

尻尾が長い、直毛

可愛いというより美人タイプ

性格:不思議ちゃん、ツンデレ

猫②(モコ)

茶白、背中に羽

オンザ眉の前髪

鍵尻尾、ふわふわ毛質

丸顔、可愛いタイプ

性格:おっとり、マイペース

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