7.。.:*♡ どなどな

文字数 2,308文字

シールックにいさんは、いつも謂れのない事を言われ続け、挙げ句好き勝手な扱いを受けてきたよ。

市場に売られていく、可哀想な仔牛だよ。

そしてそれは孔子でもあり。

ぼくは牛だとでも言うのか。

こうしとは?

本物の坊さんって意味だよ。

無頓着が過ぎるな。

食卓を囲みながら、五人は和気あいあいと食事を摂っていた。


シェルは久しぶりに高級な食材を口にし、感涙を浮かべていた。

美味しい。

この巨大な伊勢海老。

こんなに大きな葡萄。

糖度も高いし。

何者……。

これらは普通に食べているものだ。

和洋折衷何でも。

お邪魔してごめんね。

お詫びだよ。

しかし、こうしとは?

ぼくはそんなつもりは一切なくて。

善人が過ぎるねえ。

一体何者かと思うよ。

それが分かったら、早く家に帰ろう。

シェルも一緒に行くか?

一緒に?

どこへ?

霊素慈だよ。

元・霊界。

ここなら嫌なやつはいないよ。

霊素慈に?

私は特に……。

シェル。

シールックにいさんに寄り添って欲しいな。

シェルの優しさがにいさんには必要だと思うよ。

本当に?

シェルは好きだけど。

いいのかな。

うん。

まずはこの地の魔を読み解こうね。

そして皆で帰ろう。

好き。

うれぴ。

連れて行こう。

絶対にシェルを。

食事を終えた後、シェルとシールックは片付けに取り掛かり、イシュタルは入浴の支度を始めた。


アーネトルネはスクナヒコナに呼び止められ、ソファーに座っている。

ねえ!

どうやったら座学で最強になれるの?

何?

普通に学ぶだけだろう。

お前だってぼくらと一緒に相当酷い体験を繰り返した筈だ。

身に沁みて理解する筈だよ。

知らないよ!

座学だけで強くなれる訳がないから!

理論の理解と再現で幾らでも極められるし。

体験なら嫌という程繰り返したし。

そんな所以はないよ!

ぼくはいつも見ていた。

それだけだった。

鞭で打たれるのはSMの時だけ!

……ドMだもんな。

よくそんな事で興奮出来ると思っていたが。

いいじゃない、鞭。

皮膚を切り裂く感じ。

最高に脳が痺れない?

冗談じゃない。

もう二度とあんな想いはごめんだ。

鞭で叩かれる事を娯楽に思えない。

スクナ……。

あんた、アストラルから酷い罰を……。

入浴の支度を終えたイシュタルは、戻って来るなり憐れみを込めた目でスクナヒコナを見つめた。

アーネトルネは眉を顰め、イシュタルとスクナヒコナに視線を投げた。

アストラルの罰とは?
向上心の欠如だよ。

欠落とも言えそうだ。

そのせいで、感性が反転している。

しかしスクナヒコナはこれを喜びに感じているようだ。

とことんご都合主義だね。

感性が?

どういうことだ。

怠け者故に叱られているんだよ。

宇宙の全てから。

それで、物理的にしょっちゅう鞭で叩かれているけど、スクナヒコナはそれを受け入れている。

そうして、自分の都合の良いように全てを受け入れられるように自己の書き換えを行ったんだよ。

なん?

鞭で叩かれて射精するような感性の持ち主になるよう、自分で自分の点質を書き換えただと?

ふざけすぎている。

うるさいな!

いいんだよ!

気持ち良いの!

寄りすぎだよね。

ここまで来ると才能だよ。

生きにくい世の中を全て思い通りにしていこうという心と、信じられない程の下座の心と理解。

しかしそんな事をいちいち覚えていられないので、あらゆる全ての事象を表面化させて快楽道を極めている……。

イシュタルの言葉を聞きながら、アーネトルネはこれまで散々舐め尽くした苦渋の日々を思い返し、苦虫を噛み潰したようにスクナヒコナを見た。


憎しみさえ込めた眼差しを向けた後に、フッと肩の力を抜いて息を吐く。

……こいつとはパーティーのメンバーというだけの関係性にしておこう。

深入りしたくない。

それで充分だよ。

スクナは自由に生きるんだよね?

ねー?

ねー!

自由に生きるんだよ!

……。

我慢。

やがて食器の片付けを終えたシールックが居間に戻ってきた。

シェルもそばに寄り添っている。

何を話していた?
鞭で叩かれる喜びの心理について。

シールックにいさん、お風呂頂く?

鞭で?

絶対に嫌だ。

お風呂は頂くよ。

しかしシェルが先だ。


シェル、入浴の準備が終わっているらしい。

ありがとうございます。

先に頂きます。

シェルがリビングから立ち去るのを見送りながら、シールックは嫌悪感を滲ませた顔をしながらスクナヒコナを見つめた。
土の気が不足しているのはそのせいなのか。

なんて奴だ。

シールックにいさん、そういう風に感じていたの?

凄くない?

怪しい光が得意でね。
あやしいひかり?

相手を混乱させるわざだよね。

シールックにいさんはゴーストタイプだったの?

ぼくはゴーストだろ?
そうだったの!

赤ちゃんの時はあんなに暴れん坊で!

いつの間にかゴーストに進化して、通信交換でゲンガーになったというの?

それで魔の影に?

信じられない!

赤ちゃんの時って……。

ゴース時代?

そうだよ!

グレープフルーツ種が一つ。

グレープフルーツ種が一つ。

何故か唐辛子。


ゴースでゴースとか、言いまくってたでしょ!



ゆめくい!

さいみんじゅつ!

あやしいひかり!

ナイトヘッド!

またポケモンか……。
アーネちゃんはネイティオである自分が好きでしょ!

それでいいの!

兎に角、分かったよ。

シールックにいさんは、自分の認識を不特定多数の誰かに押し付けるのが得意なんだね。

あやしいひかりの混乱ってそんな感じなんだ。

いや、だって。

ぼくは間違ってないし。

……なんてことだ。

普賢菩薩としての認識を育てるように。

これは幸せへの道しるべだ。

わかったら返事をおし!

ふぁい。
イシュタルだって……ヴィクティニが好きだって……。
すまぬな。

中性子化を果たしている。

ヴィクティニは好きだが。

ヴィクティニを嫌いな人なんていない筈だ。
それからシェルが入浴に終えるまで、三人はポケモンについての会話を深めていった。
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登場人物紹介

シェル

ファクトリーの少女

タールル

ファクトリーの支配人

シールック

影の人

アーネトルネ

魔王

修業の姿

イシュタル

闇のパピヨン

スタアト

スクナヒコナ

アーネトルネ

魔王

解脱の姿

エドガー

イナンナ

エカテリーナ

解脱の姿

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