3.。.:*♡ しっせき

文字数 2,099文字

翌朝、シールックが朝食の支度をしていると、窓から小さな影が飛び出してきた。


驚いて影の正体を確認すると、なんとそれはスクナヒコナであった。

や!

おはよう!

ご飯食べさせて!

スクナ?

オモロイ芸人になるんじゃなかったのか?

そうなんだけどさ……。

スキムルークは先に家に帰っちゃったって。

ぼくも帰りたいんだけど、皆と一緒がいいかなと。

なるほどな……。

しかしアーネがなんというか。

まだ寝ているらしい。

寝坊助だよねえ。
起きてるよ!

なんだ、スクナ?

今更何のようだ。

アーネ!

また一緒に組もう!

やはりこのメンバーが楽だよ。

暫くすると、身支度を整えたイシュタルが階段から降りてきた。


彼女の様子を見て、スクナヒコナは声を荒げた。

イシュタル!

お前!

アーネと付き合っているだろう!

あれー?

スクナ。

どうしたの?

どうしたのって、また仲間に入れて貰おうと。
そうなんだ。

お笑い芸人の道は?

アーネちゃんとはずっと付き合っていくつもりだけど、それが何か?

え?

付き合うって、そういう……。

あまりやらしいことややましい事は考えないんだよ。

軽〜く生きる。

それがスクナヒコナの在り方じゃないの?

いや!

ぼくは全知全能で!

何でも言ってるの!

知ってる、じゃなくて言ってる、っていうんだ。

ふぅん。

やはりスクナだな。

私はこれからスクナと付き合うの?

恋愛感情は無しだ!

イシュタルはぼくに気があったんじゃないの?

なあに?

そういう目で見るの?

極微がまるで出来ていない。

それじゃ、全知全能とは言えないねえ。

ご、極微極微と。
全知全能っていうのは、細かい事まで何もかもを知っている、という意味もあるんよ。

分かんねーじゃ困るの。

スクナの思う全知全能は、全てを言い当てる系でしょ?

それは皆が思う全知全能ではあるけれど、神理的な意味で全知全能とは言えないの。

うぐぐ。

ふぁい。

分かりました。

ぼくの負けです。

勝った負けたの問題じゃないだろ。
神理的な意味で全知全能とは?
認識の差異という奴だ。

思ってたのと違う、というのが皆が思う真理で、神理はまた別の場所にあったりする。

難しいが、その通りだな。
あのね。

極微領域というのは、原子記号を象徴と物理的な関与という性質の意味まで理解して扱う事を言うの。

酸素Oとその性質まで完璧に理解しないことには、極微という言葉そのものを扱うことすら許されない訳。

分かるかい?

……難し過ぎて駄目。

アーネは分かるの?

何となく。
酸素の性質とは?

まあね。

酸素は酸素だけどさ。

ほら。

これが昨日言ってた、ソーマの世界なの。

ソーマを扱うのにアレキサンドリアートがどうしても必要で、その為には途方もない知識量を扱えねばならんわけ。

一朝一夕で何とかなる内容ではないことをご理解頂きたい。

分かりました。

なるほど。

む!

アーネちゃん!

アーネちゃんは我々のリーダーとして前面に立っていることが求められているぞ!

私の後ろに来てはならないし、私より偉そうであってはならない。

分かるか、この感覚!

なんという難しい世界だ。

分からん。

シールックにいさんは、パーティーの中心に位置する存在として華やかさを持たねばならんぞ!

奇を衒ってはいかんが、地味になったり卑屈にもなってはいかん。

分かるか、この感覚!

分かる。

シールックあってのパーティーだな。

マジか!

ぼくの事をそんな風に思っていたなんて……。

感極まる。

イシュタルは何なんだよ!
私は影の支配者だ!

裏でエラソーにしておきながら、表向きは大人しく過ごすんだよ!

いいとこ取りだ!

なんてやつ!

ぼくはどこでもエラソーにしているよ!

支配とか面倒だし!

これで一件落着だ。

朝食にしよう。

スクナも。

やった!

シールックの朝御飯だ!

シールックは料理が上手い!

嬉しいよ。

ぼくは料理と掃除が大好きで。

認められるなんて。

信じられない男だ。

ぼくも好きだが、そこまではなあ。

全員、超人じみているね!

私は喜んでご馳走になるよ!

ホグワーツ時代が嘘みたいに平和だ。
何?

ハリポタに出演していたの?

ぼくはハリーだよ!

厳しい世界観だった。

全員意地が悪くてね!

ぼくはムラートじゃないし。

実写の例え話をここで出すんじゃないよ。

生きたカエルチョコなんて良く考えつくよね。

中身どうなっているの?

生きたカエルチョコ?

気持ち悪いものを考えつくね。

そんなのあったっけ?

賢者の石だろう。

まだ記憶に新しいが。

随分古い話にしか思えないが。

あれは食べるのが大変だったね。

ハリーはロンから貰った謎のお菓子の存在を忘れてしまったのか。

仕方ないマグルだよ。

ハーマイオニーが好きだった!

ぼくはマグルじゃないぞ!

最初はマグルから始まったんだよ。

魔法族は突然変異さ。

マルフォイが泣くだろうが。

泣くかな?
四人はパーティーを再結成し、雑談を延々と繰り広げながら朝食を摂ることにした。



イングリッシュスタイルのブレックファストが五臓六腑に沁み渡り、皆はやっと安堵する。

ホッ。

このメンバーが最高だ。

話も面白いし。

それは良かったよ。

スクナも恋人がいるんでしょ?

いるけど。

家で待ってるよ。

早いとこ任務を済ませて帰ろう。

今日はどこへ行く?

工場に行くらしい。

皆で隠れて行こう。

朝食の後にお茶を飲んでから、片付けをして出掛ける準備を始めた。
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登場人物紹介

シェル

ファクトリーの少女

タールル

ファクトリーの支配人

シールック

影の人

アーネトルネ

魔王

修業の姿

イシュタル

闇のパピヨン

スタアト

スクナヒコナ

アーネトルネ

魔王

解脱の姿

エドガー

イナンナ

エカテリーナ

解脱の姿

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