英語を学んで聖書を理解しよう3
文字数 3,049文字
ざっくり英文法2
ここでは、名詞、形容詞、副詞、そして比較、接続詞、関係詞について学ぶ。比較構文を理解するには形容詞や副詞の比較変化を理解している必要があり、接続詞や関係詞を理解するには、名詞、副詞、形容詞の働きを理解している必要がある。
名詞
名詞は人や事物などをあらわす語であり、数や格による語形変化がある。文法的には、文の中で主語、補語、動詞や前置詞の目的語になるが、副詞の働きをすることもある。
名詞の格には主格、所有格、目的格の3つがあり、主格は主語、主格補語、また主格と同格などの働きをする。所有格は所有のほか、主語・目的語関係などを表わすことがある。
名詞句は名詞と同じように、主語、補語、目的語の働きをするのだが、名詞句になるのはおもに不定詞と動名詞である。また名詞節は、主語、補語、目的語の働きをするとともに、同格の働きをすることもある。
But who may abide the day of his coming₁?
だが、彼の来る日に誰が身を支えうるか₂。
abideは~を待つという意味をもつ動詞である。また、mayには可能を表わす古用法があるが、ここで使われたmayもこの用法だろうか。
この文でhis comingのhisが所有格なのであるが、ここではcomingが表わす動作の意味上の主語となっている。
Peter followed him out of the prison, but he had no idea that what the angel was doing was really happening; he thought he was seeing a vision₃.
それで、ペトロは外に出てついて行ったが、天使のしていることが現実のこととは思われなかった。幻を見ているのだと思った₄。
名詞や名詞相当語句が、補足的説明となる、ほかの名詞や名詞相当語句といっしょに並べられているとき、その関係は同格といわれる。後続の名詞は先行する名詞と同じ格となる。上記の英文では、that what the angel was doing was really happeningという名詞節がideaと同格となっており、ideaの内容が示されている。
形容詞
形容詞は、名詞や代名詞を修飾したり、補語になったりする。前者の用法は限定用法、後者の用法は叙述用法と呼ばれる。また、形容詞の多くは比較変化し、原級、比較級、最上級の語形をもっている。
副詞
副詞は動詞、形容詞、名詞、文などを修飾する語である。なお、古い時代の英語では、名詞の属格が副詞に用いられることは普通にあり、その名残がalways、sometimesといった語の-sにみられるという₅。シェイクスピアの時代には-sがない形も用いられており、KJV(欽定訳聖書)にも次のような例がある。
I would not live alway₆:
いつまでも生きていたくない₇。
比較
性質、状態、数量などの程度を表わすため、形容詞や副詞の語形が変化することを比較変化という。これには原級、比較級、最上級の3つがある。
原級はほかのものと比較せずに性質や状態などを述べるとき、あるいは2つのものの性質や状態が等しいことを述べるときに用いられる。また、比較級は2つを比べ、どちらの程度が高いかを述べる場合に、最上級は3つ以上のなかから最も程度が高いことを述べる場合に用いられる。
接続詞
接続詞は語と語、句と句、節と節を結びつける働きをする。語形変化はなく、対等に結びつける等位接続詞と主従の関係で結びつける従位接続詞がある。
等位接続詞には、and、or、but、forなどがあり、副詞のうち、等位接続と同じ働きをするものは接続副詞と呼ばれる。また、従位接続詞とは、従節を主節に結びつけるものであり、名詞節を導くthat、if、whetherと副詞節を導くwhen、because、ifなどがある。
欽定訳聖書には、or everという語句が用いられる。大塚によれば、これはbeforeをあらわすor ereと混同されて用いられたものだという。ダニエル書の英訳を比べてみよう。
and the lions had the mastery of them, and brake all their bones in pieces or ever they came at the bottom of the den₈.
And before they reached the floor of the den, the lions overpowered them and crushed all their bones₉.
穴の底にも達しないうちに、獅子は彼らに飛びかかり、骨までもかみ砕いた₁₀。
一番上の文が欽定訳聖書からの引用であるが、or everのところが、現代英語ではbeforeと訳されていることがわかる。つまり、or ever they came at the bottom of the denは、時の副詞節といえよう。なお、brakeは聖書などで用いられるbreakの過去形である。
関係詞
関係詞は基本的には名詞の後に置かれ、形容詞節となる節を導く。その節に修飾される名詞は先行詞と呼ばれるが、関係詞には代名詞と接続詞の働きをする関係代名詞と副詞と接続詞の働きをする関係副詞がおもなものである。
Our Father which art in heaven₁₁,
Our Father who is in heaven₁₂,
天におられるわたしたちの父よ₁₃、
Our fatherが関係代名詞whichの先行詞であり、which art in heavenという形容詞の働きをする関係節がそれを修飾している。現代英語では2つめの文に見られるように、先行詞がour fatherなので、whichではなくwhoが用いられている。また、whichは節の中では主格の代名詞として機能している。
artというのはbeの2人称、単数、現在の語形であるが、この例では3人称に一致するものとして使用されているようにみえる。これに関しては、our fatherに対する呼びかけだからartが用いられているという説明があるようだ₁₄。現代英語では、2番目の文に見られるように、whoの先行詞our fatherに合わせ、beの3人称、単数、現在の形であるisが使用されるところである。
引用など
₁ KJV. Malachi 3:2
₂ 日本聖書協会『新共同訳 新約聖書』マラキ書3章2節
₃ NIV. Act 12:9
₄ 日本聖書協会『新共同訳 新約聖書』使徒行伝12章9節
₅ 大塚高信. 1951. シェイクスピア及聖書の英語. 研究社. pp. 155-157
₆ KJV. Job 7:16
₇ 日本聖書協会『新共同訳 新約聖書』ヨブ記7章16節
₈ KJV. Daniel 6:24
₉ NIV. Daniel 6:24
₁₀ 日本聖書協会『新共同訳 新約聖書』ダニエル書6章25節
₁₁ KJV. Matthew 6:9
₁₂ CEV. Matthew 6:9
₁₃ 日本聖書協会『新共同訳 新約聖書』マタイによる福音書6章9節
₁₄ 苅部恒徳、小山良一、笹川壽昭、田中芳晴. 欽定英訳聖書初版 マタイ福音書. 研究社. p. 121
ここでは、名詞、形容詞、副詞、そして比較、接続詞、関係詞について学ぶ。比較構文を理解するには形容詞や副詞の比較変化を理解している必要があり、接続詞や関係詞を理解するには、名詞、副詞、形容詞の働きを理解している必要がある。
名詞
名詞は人や事物などをあらわす語であり、数や格による語形変化がある。文法的には、文の中で主語、補語、動詞や前置詞の目的語になるが、副詞の働きをすることもある。
名詞の格には主格、所有格、目的格の3つがあり、主格は主語、主格補語、また主格と同格などの働きをする。所有格は所有のほか、主語・目的語関係などを表わすことがある。
名詞句は名詞と同じように、主語、補語、目的語の働きをするのだが、名詞句になるのはおもに不定詞と動名詞である。また名詞節は、主語、補語、目的語の働きをするとともに、同格の働きをすることもある。
But who may abide the day of his coming₁?
だが、彼の来る日に誰が身を支えうるか₂。
abideは~を待つという意味をもつ動詞である。また、mayには可能を表わす古用法があるが、ここで使われたmayもこの用法だろうか。
この文でhis comingのhisが所有格なのであるが、ここではcomingが表わす動作の意味上の主語となっている。
Peter followed him out of the prison, but he had no idea that what the angel was doing was really happening; he thought he was seeing a vision₃.
それで、ペトロは外に出てついて行ったが、天使のしていることが現実のこととは思われなかった。幻を見ているのだと思った₄。
名詞や名詞相当語句が、補足的説明となる、ほかの名詞や名詞相当語句といっしょに並べられているとき、その関係は同格といわれる。後続の名詞は先行する名詞と同じ格となる。上記の英文では、that what the angel was doing was really happeningという名詞節がideaと同格となっており、ideaの内容が示されている。
形容詞
形容詞は、名詞や代名詞を修飾したり、補語になったりする。前者の用法は限定用法、後者の用法は叙述用法と呼ばれる。また、形容詞の多くは比較変化し、原級、比較級、最上級の語形をもっている。
副詞
副詞は動詞、形容詞、名詞、文などを修飾する語である。なお、古い時代の英語では、名詞の属格が副詞に用いられることは普通にあり、その名残がalways、sometimesといった語の-sにみられるという₅。シェイクスピアの時代には-sがない形も用いられており、KJV(欽定訳聖書)にも次のような例がある。
I would not live alway₆:
いつまでも生きていたくない₇。
比較
性質、状態、数量などの程度を表わすため、形容詞や副詞の語形が変化することを比較変化という。これには原級、比較級、最上級の3つがある。
原級はほかのものと比較せずに性質や状態などを述べるとき、あるいは2つのものの性質や状態が等しいことを述べるときに用いられる。また、比較級は2つを比べ、どちらの程度が高いかを述べる場合に、最上級は3つ以上のなかから最も程度が高いことを述べる場合に用いられる。
接続詞
接続詞は語と語、句と句、節と節を結びつける働きをする。語形変化はなく、対等に結びつける等位接続詞と主従の関係で結びつける従位接続詞がある。
等位接続詞には、and、or、but、forなどがあり、副詞のうち、等位接続と同じ働きをするものは接続副詞と呼ばれる。また、従位接続詞とは、従節を主節に結びつけるものであり、名詞節を導くthat、if、whetherと副詞節を導くwhen、because、ifなどがある。
欽定訳聖書には、or everという語句が用いられる。大塚によれば、これはbeforeをあらわすor ereと混同されて用いられたものだという。ダニエル書の英訳を比べてみよう。
and the lions had the mastery of them, and brake all their bones in pieces or ever they came at the bottom of the den₈.
And before they reached the floor of the den, the lions overpowered them and crushed all their bones₉.
穴の底にも達しないうちに、獅子は彼らに飛びかかり、骨までもかみ砕いた₁₀。
一番上の文が欽定訳聖書からの引用であるが、or everのところが、現代英語ではbeforeと訳されていることがわかる。つまり、or ever they came at the bottom of the denは、時の副詞節といえよう。なお、brakeは聖書などで用いられるbreakの過去形である。
関係詞
関係詞は基本的には名詞の後に置かれ、形容詞節となる節を導く。その節に修飾される名詞は先行詞と呼ばれるが、関係詞には代名詞と接続詞の働きをする関係代名詞と副詞と接続詞の働きをする関係副詞がおもなものである。
Our Father which art in heaven₁₁,
Our Father who is in heaven₁₂,
天におられるわたしたちの父よ₁₃、
Our fatherが関係代名詞whichの先行詞であり、which art in heavenという形容詞の働きをする関係節がそれを修飾している。現代英語では2つめの文に見られるように、先行詞がour fatherなので、whichではなくwhoが用いられている。また、whichは節の中では主格の代名詞として機能している。
artというのはbeの2人称、単数、現在の語形であるが、この例では3人称に一致するものとして使用されているようにみえる。これに関しては、our fatherに対する呼びかけだからartが用いられているという説明があるようだ₁₄。現代英語では、2番目の文に見られるように、whoの先行詞our fatherに合わせ、beの3人称、単数、現在の形であるisが使用されるところである。
引用など
₁ KJV. Malachi 3:2
₂ 日本聖書協会『新共同訳 新約聖書』マラキ書3章2節
₃ NIV. Act 12:9
₄ 日本聖書協会『新共同訳 新約聖書』使徒行伝12章9節
₅ 大塚高信. 1951. シェイクスピア及聖書の英語. 研究社. pp. 155-157
₆ KJV. Job 7:16
₇ 日本聖書協会『新共同訳 新約聖書』ヨブ記7章16節
₈ KJV. Daniel 6:24
₉ NIV. Daniel 6:24
₁₀ 日本聖書協会『新共同訳 新約聖書』ダニエル書6章25節
₁₁ KJV. Matthew 6:9
₁₂ CEV. Matthew 6:9
₁₃ 日本聖書協会『新共同訳 新約聖書』マタイによる福音書6章9節
₁₄ 苅部恒徳、小山良一、笹川壽昭、田中芳晴. 欽定英訳聖書初版 マタイ福音書. 研究社. p. 121