第10話 ヨシュア記

文字数 1,060文字

概要

 エジプトから先祖の土地へ帰還したイスラエル民族は、王国をつくり、国の分裂と滅亡を経験する。この王国の滅亡について、鈴木は「国が滅んだのは、つきつめればイスラエル人がアダムの罪を身に帯びていたからです。しかし、神はそれを憐れに思い神の子イエス・キリストを地上に送り、その血によって罪をあがなってくださった、と新約聖書に続いていくわけです¹ 。」と書いているが、この認識は信仰をもたない人に共有されるものではないだろう。

 ヨシュア記はモーセ五書の続きであり、モーセの後継者であるヨシュアがヨルダン川を渡り、カナン(パレスチナ)に帰還する話が記されている。イスラエル人がエジプトに滞在している間、いくつかの民族がカナンに定着していたため、土地の占領をめぐって激しい戦闘が繰り広げられることとなるのだが、ヨシュア記では「彼らの心をかたくなにし、イスラエルを迎えて戦わせたのは、主から出たことであり、それは主が彼らを容赦なく聖絶するためであった」などと記されている。また、ヨシュア記の後半に関しては占領地を12の部族に分配する話となっている。

ヨシュア記の本文

 占領後、老人となったヨシュアはこう述べる。「主が強大な国々をあなたたちのために追い払ってくださったから、あなたたちの行く手に立ちはだかる者は、今日まで一人もなかった。あなたたちは一人で千人を追い払える。あなたたちの神、主が約束されたとおり(おん)(みずか)らあなたたちのために戦ってくださるからである。だから、あなたたちも心を込めて、あなたたちの神、主を愛しなさい。しかし、もしあなたたちが背いて離れ去り、あなたたちのうちに残っているこれらの国民となれ親しんで、婚姻関係を結び、向うに行ったり、こちらに迎えたりするなら、あなたたちの神、主がもはや、これらの国民を追い払われないことを覚悟しなさい。彼らはあなたたちの罠となり、落とし穴となり、脇腹を打つ鞭、目に突き刺さるとげとなり、あなたたちは、あなたたちの神、主が与えられたこの良い土地から滅びうせる。」(23章9-13節)
 この主張はくり返し述べられる排他的な命令だが、民族の宗教的アイデンティティの保持を強く望んだからであろうか。民族の経験による判断だと思われるが、宗教的寛容性のなさが見られると思う人もいるだろう。



₁ 鈴木崇巨(2016)『1年で聖書を読破する』いのちのことば社. p.65

参考文献
鈴木崇巨(2016)『1年で聖書を読破する』いのちのことば社
共同訳聖書実行委員会(1987)『聖書 新共同訳』日本聖書協会
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