イーグルトンによる解釈学の説明

文字数 788文字

 テリー・イーグルトンは『文学とは何か』という本を書いている。原書は Literary Theory というタイトルだからなのかは知らないけれど、岩波の宣伝には「欧米の文学理論の諸潮流を初心者にもわかりやすく解説するすぐれた入門講義」とか書かれている。まあ、そうかもしれないけれど、ぼくとしては、教科書や大学の講義という単語で想起されるような本でもなんでもなく、文学批評に関する彼の批評、あるいはエッセイのようなもののように思える。
 ほかの人にとってどういう評価を受けるのか知らないが、自分にとっては、とても興味深く読める本で、何か難しそうな感じがして敬遠していたことを後悔したぐらいである。
 この本では、文学に関する哲学思想も解説されていて、解釈学の説明がある。それによると、解釈学は、「元来、聖書の本文の解釈に限って用いられていた」が、意味が拡大し、本文(テクスト)解釈上の問題すべてを含むようになったそうだ¹。ここでいう解釈上の問題とは、おそらくドイツの哲学者ガダマーが『真理と方法』で提起したと記されている、「文学テクストの意味とは何か?」、「『客観的』了解は可能なのか?」、「あらゆる了解は、私たち自身の歴史的状況と関係なくしてはあり得ないのか?」といった問題のことだと思う。
 聖書と解釈学に関係する本としては、大貫隆の『ヨハネ福音書解釈の根本問題: ブルトマン学派とガダマーを読む』といった本が見つかるので、日本でも解釈学の考えや問題意識に刺激されて聖書を読む試みがなされているようだ。
 イーグルトンによる、『存在と時間』や『真理と方法』の説明は比較的わかりやすいので、こうした本を敬遠する態度を軟化させてくれる。できることなら、これらを読んで聖書を解釈できるようになりたいものだ。



注釈
₁ T.イーグルトン. 大橋洋一訳. 『文学とは何か』. 岩波書店. pp.104-105
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