英語を学んで聖書を理解しよう5
文字数 2,634文字
ざっくり英文法4
ここでは、動詞について学習する。現在時制と過去時制の区別があり、主語の人称と数への一致がある動詞は本動詞あるいは定形動詞といわれる。一方、不定詞、分詞、動名詞には、そのような特徴がなく、準動詞あるいは非定形動詞といわれる。
1 動詞
人や物事の動作や状態を表わし、語形としては、原形、現在形、過去形、過去分詞形、現在分詞形、動名詞形、to不定詞形がある。また、動詞ごとに、どのような文の要素をとるかが定まっており、それによって文の型が定まることになる。
無人称動詞
古英語で、主語をとらない無人称動詞は、中世から近代へと進むにつれ、itをもって主語とするようになったという₁。たとえば、likeの古英語に相当するものは、非人称構文で使われる動詞で、「・・に喜びを与える、・・の気に入る」という意味で、中世の英語では it me liketh や it liketh me のように使われるようになり、近代英語で I like のような人称動詞になった。これは、もともと与格目的語であったものが形式主語 it のかわりに主語として用いられるようになったとうことである。
欽定訳聖書でも、無人称的に使われる動詞がある。
And it repented the LORD that he had made man on the earth, and it grieved him at his heart₂.
地上に人を造ったことを後悔し、心を痛められた₃。
この文の repented や grieved が、ここでいう無人称的に用いられた動詞であり、the LORD や him がそれぞれの意味上の主語となっている。
3人称複数に対する直説法のbe
the powers that be という表現がある。当局といった意味の名詞として用いられるのだが、この表現は、以下の欽定訳聖書の記述に基づくものである。
the powers that be are ordained of God₄.
今ある権威はすべて神によって立てられたものだ₅
ここの be は3人称直説法に用いられたものであり、その他の例としては、
They that be whole need not a physician, but they that are sick₆.
医者を必要とするのは、丈夫な人ではなく病人である₇。
などがある。なお、whole は healthyを意味する。
2 準動詞(不定詞、分詞、動名詞)
準動詞とは、不定詞、分詞、動名詞のことで、不定詞には to 不定詞と原形不定詞、分詞には現在分詞と過去分詞が存在する。動詞的な働きとしては、完了形や受動態があり、目的語や補語をとり、副詞的修飾語句に修飾されるといった特徴がある。また、これ以外の働きとして、不定詞は名詞的、形容詞的、副詞的な働きをし、分詞は形容詞的、副詞的な働きをし、動名詞は名詞的な働きをする。
受動不定詞
不定詞は、能動の形で受動の意味を表わすことがある。現代英語では、Who is to blame? や There's no time to lose. といった表現でこの用法が観察される。ただし、欽定訳聖書には、受け身の形をした不定詞も用いられている。
what is to be done for thee₈?
あなたのために何をしてあげればよいのだろうか₉。
なお、theeというのは2人称単数の目的格である。
対格+不定詞
「対格+不定詞」という古い形は、現在では「for+対格+不定詞」などで表されるが、欽定訳聖書でも、この形が用いられている。
Lord, it is good us to be here₁₀.
Lord, it is good for us to be here₁₁:
主よ、わたしたちがここにいるのは、すばらしいことです₁₂。
最初の文はウィクリフによる英訳なのだが、この文の us が対格なのか与格なのかについては確定していない。
a- + -ing
新英和大辞典の説明によれば、a- は動名詞について in the act of (・・して)や in the process of(・・中で)という意味になるが、現在では、a- は通例はぶかれるため、-ing形は現在分詞ともみなされるようだ。
while the ark was a preparing₁₃,
ノアの時代に箱舟が作られていた間₁₄、
3 時制と相(完了・進行)
時制というのは、現在、過去、未来を表わすときの動詞の形なのだが、現在や過去が動詞の語形変化で表されるのに対し、未来は助動詞などと組み合わさって表わされる。また、相というのは、動作や出来事の様態や局面のことで、英語では進行形で進行相が、完了形で完了相が表わされる。
4 態
態とは、主語が動詞が表わす行為に対してどのような関係なのかを示す動詞の形態のことで、能動態では主語が行為者、受動態では行為を受ける側が主語に置かれる。能動態の主語は、受動態ではbyの後に置かれる。
受動構文に用いられるof
欽定訳聖書では、動作主を導く前置詞にbyだけでなくofが用いられる。
All things are delivered unto me of my Father:₁₅,
すべてのことは、父からわたしに任せられています₁₆。
引用など
₁ 大塚高信. 1951. シェイクスピア及聖書の英語. 研究社. p. 121
₂ KJV. Genesis 6:6
₃ 日本聖書協会『新共同訳 新約聖書』創世記6章6節
₄ KJV. Romans 13:1
₅ 日本聖書協会『新共同訳 新約聖書』ローマの信徒への手紙13章1節
₆ KJV. Matthew 9:12
₇ 日本聖書協会『新共同訳 新約聖書』マタイによる福音書9章12節
₈ KJV. 2 Kings 4:13
₉ 日本聖書協会『新共同訳 新約聖書』列王記下4章13節
₁₀ WYC. Matthew 17:4
₁₁ KJV. Matthew 17:4
₁₂ 日本聖書協会『新共同訳 新約聖書』マタイによる福音書17章4節
₁₃ KJV. 1 Peter 3:20
₁₄ 日本聖書協会『新共同訳 新約聖書』ペトロの手紙一3章20節
₁₅ KJV. Matthew 11:27
₁₆ 日本聖書協会『新共同訳 新約聖書』マタイによる福音書11章27節
ここでは、動詞について学習する。現在時制と過去時制の区別があり、主語の人称と数への一致がある動詞は本動詞あるいは定形動詞といわれる。一方、不定詞、分詞、動名詞には、そのような特徴がなく、準動詞あるいは非定形動詞といわれる。
1 動詞
人や物事の動作や状態を表わし、語形としては、原形、現在形、過去形、過去分詞形、現在分詞形、動名詞形、to不定詞形がある。また、動詞ごとに、どのような文の要素をとるかが定まっており、それによって文の型が定まることになる。
無人称動詞
古英語で、主語をとらない無人称動詞は、中世から近代へと進むにつれ、itをもって主語とするようになったという₁。たとえば、likeの古英語に相当するものは、非人称構文で使われる動詞で、「・・に喜びを与える、・・の気に入る」という意味で、中世の英語では it me liketh や it liketh me のように使われるようになり、近代英語で I like のような人称動詞になった。これは、もともと与格目的語であったものが形式主語 it のかわりに主語として用いられるようになったとうことである。
欽定訳聖書でも、無人称的に使われる動詞がある。
And it repented the LORD that he had made man on the earth, and it grieved him at his heart₂.
地上に人を造ったことを後悔し、心を痛められた₃。
この文の repented や grieved が、ここでいう無人称的に用いられた動詞であり、the LORD や him がそれぞれの意味上の主語となっている。
3人称複数に対する直説法のbe
the powers that be という表現がある。当局といった意味の名詞として用いられるのだが、この表現は、以下の欽定訳聖書の記述に基づくものである。
the powers that be are ordained of God₄.
今ある権威はすべて神によって立てられたものだ₅
ここの be は3人称直説法に用いられたものであり、その他の例としては、
They that be whole need not a physician, but they that are sick₆.
医者を必要とするのは、丈夫な人ではなく病人である₇。
などがある。なお、whole は healthyを意味する。
2 準動詞(不定詞、分詞、動名詞)
準動詞とは、不定詞、分詞、動名詞のことで、不定詞には to 不定詞と原形不定詞、分詞には現在分詞と過去分詞が存在する。動詞的な働きとしては、完了形や受動態があり、目的語や補語をとり、副詞的修飾語句に修飾されるといった特徴がある。また、これ以外の働きとして、不定詞は名詞的、形容詞的、副詞的な働きをし、分詞は形容詞的、副詞的な働きをし、動名詞は名詞的な働きをする。
受動不定詞
不定詞は、能動の形で受動の意味を表わすことがある。現代英語では、Who is to blame? や There's no time to lose. といった表現でこの用法が観察される。ただし、欽定訳聖書には、受け身の形をした不定詞も用いられている。
what is to be done for thee₈?
あなたのために何をしてあげればよいのだろうか₉。
なお、theeというのは2人称単数の目的格である。
対格+不定詞
「対格+不定詞」という古い形は、現在では「for+対格+不定詞」などで表されるが、欽定訳聖書でも、この形が用いられている。
Lord, it is good us to be here₁₀.
Lord, it is good for us to be here₁₁:
主よ、わたしたちがここにいるのは、すばらしいことです₁₂。
最初の文はウィクリフによる英訳なのだが、この文の us が対格なのか与格なのかについては確定していない。
a- + -ing
新英和大辞典の説明によれば、a- は動名詞について in the act of (・・して)や in the process of(・・中で)という意味になるが、現在では、a- は通例はぶかれるため、-ing形は現在分詞ともみなされるようだ。
while the ark was a preparing₁₃,
ノアの時代に箱舟が作られていた間₁₄、
3 時制と相(完了・進行)
時制というのは、現在、過去、未来を表わすときの動詞の形なのだが、現在や過去が動詞の語形変化で表されるのに対し、未来は助動詞などと組み合わさって表わされる。また、相というのは、動作や出来事の様態や局面のことで、英語では進行形で進行相が、完了形で完了相が表わされる。
4 態
態とは、主語が動詞が表わす行為に対してどのような関係なのかを示す動詞の形態のことで、能動態では主語が行為者、受動態では行為を受ける側が主語に置かれる。能動態の主語は、受動態ではbyの後に置かれる。
受動構文に用いられるof
欽定訳聖書では、動作主を導く前置詞にbyだけでなくofが用いられる。
All things are delivered unto me of my Father:₁₅,
すべてのことは、父からわたしに任せられています₁₆。
引用など
₁ 大塚高信. 1951. シェイクスピア及聖書の英語. 研究社. p. 121
₂ KJV. Genesis 6:6
₃ 日本聖書協会『新共同訳 新約聖書』創世記6章6節
₄ KJV. Romans 13:1
₅ 日本聖書協会『新共同訳 新約聖書』ローマの信徒への手紙13章1節
₆ KJV. Matthew 9:12
₇ 日本聖書協会『新共同訳 新約聖書』マタイによる福音書9章12節
₈ KJV. 2 Kings 4:13
₉ 日本聖書協会『新共同訳 新約聖書』列王記下4章13節
₁₀ WYC. Matthew 17:4
₁₁ KJV. Matthew 17:4
₁₂ 日本聖書協会『新共同訳 新約聖書』マタイによる福音書17章4節
₁₃ KJV. 1 Peter 3:20
₁₄ 日本聖書協会『新共同訳 新約聖書』ペトロの手紙一3章20節
₁₅ KJV. Matthew 11:27
₁₆ 日本聖書協会『新共同訳 新約聖書』マタイによる福音書11章27節