2月1日 甜不辣と地瓜條(三奈乃の台湾語講座付き!)

文字数 2,150文字

 晴れ。
 身体に悪いとわかっている。
 でも、食べたい。

 中国語で、夜食のことを「宵夜(シャオ・イエ)」と言う。
 大体夜食を食べるなんて身体にいいわけがないし、しかも、油で揚げたものを食べるなんてほとんど自殺行為だ。

 でも、時には眠れない夜というものがあるし、なぜか夜中に小腹が空いてしまうなんてこともある。
 あると思う。
 ありますよね? 
 ないんですか?

 えっ? 本当にないの?
 もういいです。わかりました。
「ない」と言い切ったあなたは、もうこんな文章を読むのは今すぐやめて、引き続きストイック且つ立派な生活をお送り下さい。

 へーんだ!

 ――というわけで、怠惰で堕落した冬休み生活を送っている南ノ三奈乃です。

 そもそも、タイトルの「懶惰(ラン・ドゥオ)」っていうのは、日本語の「怠惰(たいだ)」とか「めんどうくさがり」の意味ですからね。日本語でも「懶惰(らんだ)」という語はもちろんあるんですけど、最近はあまり使われないようなので念のため。そう言えば、太宰治に「懶惰(らんだ)歌留多(かるた)」という短篇があります。

 台湾の「宵夜」の定番は、「鹽酥雞(イェン・スゥ・チー)」です。
 この店のは、油がわりときれいそうなのですが、「夜市(イェ・シィー)」(ナイト・マーケット)なんかでは、「前にこの油を換えたのは、いったいいつなんだろう?」という疑問が、心中に夏の入道雲よろしく湧き起こる褐色の油というのがあったりします。

 まあ、「油がわりときれいそう」と言っても所詮は相対的な問題ですから。こうしたものを食べる度に、わたしの頭をよぎる言葉――

「緩慢なる自殺」。

 ははは。身も蓋もない。

 さて、「鹽酥雞」とはいかなるものか。
 これです。



「鹽酥雞」だけでなく、今日は「軟骨(ルゥアン・グゥ)」もあります。

 次が、「甜不辣(ティエン・プゥ・ラー)」。
 これは、日本殖民地時代に、日本語の「てんぷら」が語源となってできた台湾語です。台湾語には、日本語由来の単語がかなりあります。「オートバイ」とか「兄貴(アニキ)」とか、特に面白いのでは「(あたま)コンクリ」というのがあります。これは、「頭がコンクリートのように硬くて、融通がきかない」という意味で揶揄的に使われるのですが、「頭」は本来台湾語では、「タゥ・カッ」みたいな発音で、もちろん「あたま」ではないのですが、一種熟語的な用法のためか、日本語のままの発音で「あたま、コンクリ」と言って、中年以上の台湾人(外省人※は除く)には先ず間違いなく通じます。

 話が大分脱線したので、「甜不辣」に戻りましょう。
 この語も、なにしろ語源が日本語の「てんぷら」ですから、日本語発音で「てんぷら」と言ってもたぶん通じますが、確実に伝えたいなら、こう発音して下さい。

 てんぷ、らー

「ぷ」のところで、一旦区切って、「らー」のところを、音を引き延ばしつつ、急に下げるようにして読んで下さい。赤ちゃんに「いない、いない、ばー」をする時の、「ばー」の感じで発音して下さい。

 そうそう。

 よくできました。皆さん、これで台湾語をひとつマスターしましたね。ぱちぱち。
 あれ? けっこう役に立つじゃん、わたしの駄文も!
 あっ、前も言いましたが、台湾語と中国語は違うんですよ。台湾で「國語」と呼ばれている公用語が所謂(いわゆる)中国語で、台湾語は言語学的には「閩南語」と言います。

 では、「甜不辣」の写真公開です。



 ええーーーーー!!!

 全然違わない? 日本の「てんぷら」のイメージと。
 
 ね! わたしも最初見た時は、びっくりしましたよ。
 これ、原料は魚のすり身ですよ。かまぼことは食感が異なりますが、原料的には似ています。「なぜこうなった?」と思わずツッコミたくなりますが、味はけっこうイケます(ビールに合う感じ)。わたしは、きらいじゃないです。

 最後に、もう一つ。
 これが、わたしの超お薦め。
地瓜條(ディー・グゥア・ティアオ)」です。「地瓜」っていうのは、サツマイモです。「條」というのは、細長い形状の物を指します。百聞は一見に()かず。写真を御覧下さい。



 これがねえ、おいしいんですよ!
 アツアツのを食べると、サツマイモの自然な甘さが口の中いっぱいに広がって、なんとも言えません。
 自分の好みで、「梅粉(メイ・フェン)」という粉末をふってもらうこともできます。わたしはいつもふってもらっています。これを加えると、あまずっぱい味になって、よりおいしいと思うんですが、たぶん、身体に対する危険度は確実に高まっています。

 ところで――
 わたしって、なんか食べてばっかりいると思われてるんじゃないかしら?

 今日のBGMは王力宏の代表的バラード「Forever Love」です。URL:https://youtu.be/ULcmgv837MQ
 本文の内容とは、関係ありませんが(笑)

※1945年、蒋介石率いる国民党及び彼らと一緒に中国大陸から台湾に渡ってきた人を「外省人」、それ以前から台湾に住んでいた人を「本省人」と呼んで区別する。両者はしばしば政治的対立を生み、それは現在まで続いている。ちなみに、現在の政権与党・民進党は「本省人」の政党であり、蔡英文は「本省人」の総統である。「本省人」の言語は「閩南語」と「客家語」に分かれるが、人口的に「閩南人」が「客家人」より多いために、一般的に「閩南語」が「台語」(台湾語)と称される。ただ、これに対しては「客家人」からの批判もあるそうで、台湾は本当に言語問題が複雑!

 



 
 
 
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