1月15日 手搖飲料と陽明山

文字数 1,506文字

 晴れ。
 天気がいいので、すぐテストの採点を始める気になれない(怠け者はいろいろ言い訳を考えるのは得意だ)。そこで、「手搖飲料(ショウ・ヤァオ・イン・リィアオ)」を買いに行くことにする。「手搖飲料」というのは、簡単に言ってしまえば「珍珠(チェン・チュウ)」(タピオカ)が入っている飲み物のことだ。
 
 タピオカが全部底に沈んでしまったりしないように、飲む前に「手で揺する」から「手搖飲料」と呼ぶ。
 今日は天気がいいので、いつもの店でなく、少し遠くまで歩いて買いに行くことにする。市街地の向こうに、薄紫色に陽明山(ヤン・ミィン・シャン)が望見される。

 陽明山と一口に言っても、一つの山ではなく、大屯山(ダー・ドゥン・シャン)七星山(チー・シィン・シャン)紗帽山(シャー・マオ・シャン)小觀音山(シャオ・グゥアン・イン・シャン)という四つの山の連なりを漠然とそう呼ぶ。陽明山の正式名称は「陽明山國家公園」で、四つの山を含む一帯全てが国家公園になっている。
 
 天気がいい日に、台北(タイ・ペイ)の街から眺めると、陽明山は台北を囲む屏風のように見える。そう、台北は盆地である。だから、日本の京都のように夏は暑く、冬は寒い。首都だから物価も高い。地価など、この間見たニュースによるとニューヨークより高いらしい。そういう意味では所謂「住みやすい」場所ではない筈だが、それでもわたしは台湾の中で、やっぱり台北が一番好きだ。
 そして、台北の街を歩くのが好き。

 さて。
 「餐廳(ツァン・ティン)」(レストラン)が多い場所には飲み物屋も多い。台北は競争が激しいせいか、店はけっこうころころ変わる。前にあった店がいつの間にかなくなって、新しい店になっているなんていうのは、日常茶飯事。お気に入りの店がいきなり消えているとショックだが、新しい行きつけを探す楽しみもある。のろのろ歩いて探す。

 看板に誘われて、初めての店で「珍珠奶茶(チェン・チュウ・ナイ・チャー)」(タピオカ・ミルクティー)を買った。台湾の飲み物は甘み、氷の量、温度などを細かく指定できる。わたしは「無糖(ウゥ・タン)」で「溫的(ウェン・デェ)」(温かめ)にする。甘味に関しては、「正常(チェン・チャン)」というのが一番甘いのだが、もうこれは

どころが、口が曲がるほどの

な甘さなので、絶対に頼まない。そもそも「珍珠」(タピオカ)というのは澱粉のかたまりなのでカロリーが高いし、店によっては「珍珠」そのものに甘味が付いているところもある。それで糖度を「正常」(実質異常)にするのは、はっきり言って自殺行為だ。
 甘味に関しては、「正常」→「少糖(シャオ・タン)」→「微糖(ウェイ・タン)」→「無糖(ウゥ・タン)」の順に程度が弱くなる。
 わたしが頼むのは、いつも「無糖」だ。本当は「微糖」の方がおいしいのだが、太るから仕方がない。
 
 さっき「看板に誘われて」と書いたが、これはもう反則である。出てきた飲み物の容器を見ていただければ、御了解いただけるであろう。



 ピカチュウの笑顔が、眩しい。
 あ、ここでちょっと断っておくが、このピカチュウはちゃんと正式授権の上で使用されている。
 日本人の中にはアジアの国に対して偏見のある人がいて、こういうのを見ると、すぐ海賊版かと思い込んだりするが、何十年も前ならいざ知らず、現在の台湾は著作権に対して非常に厳しい国なので、どうか誤解のないように。
 
 ……ところで、わたしはこんなことを楽しげに書いていていいのか。

 テストの採点がまだ山ほど残ってるぞ!

 「手搖飲料」でパワーをつけて、テスト用紙の積み重なった机の前に戻らなきゃ。

 ところで、今日の「珍珠奶茶」は可愛さに比して、味の方は正直いまひとつだった。残念。

 では、今日のBGMは台湾の有名歌手の一人である張信哲の「残念」にしよう。もちろん、これはわたしの洒落で、日本語の「残念」とは意味が違う。中国語の「残念(ツァン・ニィネン)」は「(おもい)が残る」という意味です。 URL:https://youtu.be/_25rYB5N31s
 




 


 
 
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