1月21日 旗魚米粉湯と多言語社会

文字数 1,360文字

 晴れ。
 定期的に、食べたくなる味があります。
 もちろん、高級レストランのコース料理とかではありません。
 ばりばりの庶民テイストです。
 
 「旗魚(チィ・ユィ・)米粉湯(ミィ・フェン・タン)」。
 写真はこれです。

 「旗魚」というのは、カジキのこと。
 「米粉」を「ミィ・フェン」と呼ぶのは、「國語(クゥオ・ユゥ)」の発音で、「台語(タイ・ユゥ)」では、「ビーフン」と言います。わかり易く言えば、春雨です。日本でも料理番組などで、「ビーフン」という言い方が使われることがあるようですが、あれは「台語」の発音なんです。

 台湾では、一般的に公用語は「國語」と称される言語です。「國語」という名称は日本殖民地時代に、日本人が日本語教育を「國語教育」として導入した名残だと言われています。
 もちろん、1945年を境に、中国大陸から渡ってきた蔣介石率いる「國民黨政府」が行ったのは日本語教育ではなく北京語教育だったので、1945年以降の台湾では、「國語」は「北京語」を指すことになりました。日本人が一般に「中国語」と呼んでいるのがこれです。

 「台語」は「台湾語」という意味で、言語学的には「閩南語(ミン・ナン・ユゥ)」と呼ばれます。台湾はその他に「客家語(クゥ・チィアー・ユゥ)」や、たくさんの先住民の言語もある多言語社会です。
 面白いのは、台北のMRT(地下鉄のようなものだが、地上を走っている部分も多い)における駅名のアナウンスです。各駅に着くごとに「國語」「台語」「客家語」、更に英語の計四か国語でアナウンスされます。最近では――これはさすがに全ての駅ではなく、主要駅限定ですが、日本語のアナウンスまで加わって計五か国語になることもあります。最初に日本語のアナウンスを聞いた時は、さすがにびっくりしました。

 一つの言語というのは、そのまま一つの文化です。多言語社会は、多文化社会だと言えます。台湾はアジアで初めて同性婚を法的に認めた国ですが、そうした性の多様性を認める背景には台湾が元々多言語社会であり、異なる文化を受け入れる素地があることと無関係ではないように思われます。

 「旗魚米粉湯」の話から脱線しました。話を戻します。
 中国語で「(タン)」というのは、「お()」のことではなく、「スープ」のことです。カジキベースのスープにビーフンが入った料理ということになります。上にかかっている緑のものは、「韭菜(チィウ・ツァイ)」(ニラ)です。サクサクした食感を添えてくれる「韭菜」が、この「旗魚米粉湯」には欠かせません。

 他にも、この店では小ぶりの牡蠣や小エビを揚げたものが有名なので、それも頼みます。上に載っているのは生姜です。

(牡蠣)


(小エビ)

 とてもおいしいです。
 でも、身体には悪そうな気がします。なんとなく(笑)
 だから、定期的に食べると言っても、数か月に一回くらいですが……。

 さて、今日のBGMですが、梁靜茹(リィアン・チン・ルゥ)の「可惜不是你」(残念ながら、あなたじゃなかった)です。URL:https://youtu.be/k_l7FVsqUyM
 梁靜茹はマレーシア出身ですが、台湾で歌手デビューしたので台湾の歌手と言っていいと思います。透明感があり、且つ情感豊かな歌声が特徴で、ヒット曲が多い人気歌手です。文章の内容とは直接関係はないのですが、マレーシアには中国系の人が多く、そういう人が台湾で歌手になるというのも、中国語文化圏の多様性の一つの表れではあると思います。


 
 

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