2月16日 台湾お正月料理の代表的スープ〈佛跳牆〉とその伝説

文字数 1,700文字

 晴れ。
 今日は旧暦の1月5日。台湾では、一般的に今日までがお正月休みということになります。
 で、今日はお正月休み最後の一日ということで、台湾お正月料理特集ということにしたいと思います。

 先ずは、台湾お正月料理の代表的スープと言っていい〈佛跳牆(フォ・ティアオ・チィアン)〉です。
〈佛跳牆〉。直訳すれば、「仏も〈(チィアン)〉(壁)を跳び越える」。
 
 なんじゃそりゃ?
 
 すごい名前の料理ですが、これにはある伝説があります。

 昔々、山海の珍味を食べ飽きた皇帝、もう何を食べてもおいしくありません。ついに癇癪を起こして料理人を呼びつけ、「朕を満足させる料理を作れ。さもないと、お前は打ち首だ!」

 ひええーー!

 殺されたくない料理人は必死で知恵を振り絞り、試行錯誤を繰り返し、何とか皇帝を満足させる料理を作ろうとするのですが、うまく行きません。

「駄目だ。もう逃げるしかない」

 料理人は逃亡することにしたのですが、(いたち)の最後っ()とでも言うのか、最後に開き直ってそこら辺にあった食材を何でもかんでも鍋にぶち込んで煮てみたのです。

 ――と、不思議なことが起こりました。

 鍋からは、何とも言えない美味しそうな匂いが漂い流れ始めたではありませんか! その匂いのあまりの香ばしさに、隣で修行していた高僧まで煩悩(ぼうのう)断ちがたく、なんとお寺の壁を()(のぼ)って料理人の厨房(ちゅうぼう)を覗き込んだのです。
 このスープには皇帝も大満足、料理人は打ち首を免れましたとさ。めでたし、めでたし。
 高僧をも堕落させるほどの美味しいスープ。以来、この料理は〈佛跳牆〉と呼ばれるようになったのです。

 ――という伝説のあるこのスープ。中に何が入っているのか気になりますよね? でも、これは細かく説明するより、材料の中国語をただ列挙した方が、かえって想像が膨らんでいいのではないかと思います(名付けて谷崎潤一郎『美食倶楽部』技法。なんちゃって……)

 雞肉、竹笙、排骨、海參、栗子、鵪鶉蛋、干貝、花膠、火腿、冬菇、冬筍、鮑魚、白菜等……

 ただですね、これだけごちゃごちゃ入っていると、正直見た目はいまいちなんです。それでもレストランとかの宣伝写真とかならきれいに撮るのでしょうが、わたしのは家庭用の鍋からそのままなので、余計に……。
 でも、かえって得体の知れない雰囲気が出ていいかも?
 
 ジャジャーン!
 こんな感じです。



 うわっ、わたしの写真で見ると、なんか不味(まず)そう! どうしよう!!
 ま、なんて言うんですか。この料理はもともと匂いと味勝負ですから(汗)。

 次は、〈香腸(シィアン・チャン)〉(ソーセージ)。
 これは日常的に食べる物なのですが、お正月料理の中の一品に必ず入ってきます。写真は下。



 黒っぽく見えるのは焦がしたんじゃなくて、これはちょっと特別な〈藥膳香腸〉というやつで、漢方が入っているせいなんです。
 あはは、やっぱり正直に言います。
 少し焦がしちゃいました(すみません)。

 次は〈醉蝦〉《ツゥイ・シィアー》です。〈(ツゥイ)〉(酔う)という言葉通り、お酒(紹興酒)が入っています。蝦は〈草蝦(ツァオ・シィアー)〉と呼ばれる大きなエビです。私的には、今年はこれが一番おいしかったです。写真はこれ。



 最後は、〈年糕(ニィエン・ガオ)〉です。ざっくり言えば、台湾式お餅です。小麦粉、卵、牛乳(材料は人によって異なるかもしれません)で(ころも)をつけた後、本来は油で揚げるのですが、今回は健康(カロリー)を考慮してフライパンで焼いています。写真を御覧下さい。



 右がビフォー・ピクチャー、左がアフター・ピクチャーです。
 〈年糕〉そのものに、甘い味がついています。

 以上です。
 写真の部分は、正直いまいちで申し訳ありません。
 どこかから画像をお借りしてくれば、もっとおいしそうな写真になるとは思うのですが、それをあえてしないところが、この『台灣懶惰日記』の味と思っていただければ……なあんて、虫のよいことを考えているわたくしです。

 新暦が当たり前の現代日本の感覚とは大幅にずれてしまうのですが、ここで改めて――

 新年快樂(シィン・ニィエン・クゥアイ・ルゥ)
 今年もよろしくお願い致します!

 さて、本日のBGMは蕭敬騰の「阿飛的小蝴蝶」です。URL:https://youtu.be/vNR3MlBBDZo

 






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