2月11日 除夕と火鍋

文字数 1,328文字

 雨。
 今日は、「除夕(チュウ・シィ)」(大晦日)。
 お昼に「火鍋(フゥオ・グゥオ)」を食べに行った。

 別に、除夕には火鍋を食べるなんていう習慣はない。
 ただ、食べたかったから食べに行っただけ(笑)。

 そう言えば、森見登美彦の『夜は短し歩けよ乙女』に、火鍋という料理が登場する。ちょっと引用してみよう。

 目の前で煮え立つ古びた鉄鍋には中央にS字形の仕切があり、スープが紅白に分かれている。脳天に突き抜ける刺激臭が立ち上ってくる。得体の知れぬ茸類や野菜が浸って、地獄の釜のごとく煮えたくっていた。
「これは火鍋というものでな」
 李白氏は籐椅子に腰掛けたまま、ニコヤカに笑いながら言った。※1

 この記述の中の「火鍋(ひなべ)」を、火鍋(フゥオ・グゥオ)だと考えると、半分は正しく半分は正しくない。

 そもそも、火鍋というのは鍋料理のことであって、それ自体は辛いことを意味しない。辛い鍋料理のことは、「麻辣鍋(マァ・ラー・グゥオ)」と言う。
 
 先ほどの引用部にあったように、鍋の中央を仕切で区切って、二つの味を楽しむことができるのは本当。(下の写真を参照)



『夜は短し歩けよ乙女』では、この紅白どちらのスープも滅茶苦茶辛いことになっている。なにしろ、「地獄の釜」に譬えられるくらいだからすごい。
 しかし、実は白い方は普通の鍋料理で、辛くない。
 辛いのは、赤い方だ。
 この色を見ると、皆さんも、あまりの衝撃に歪んだ口から火を吹くほどの恐るべき辛さを想像するのではないだろうか。

 あ、でも、御心配なく。
「麻辣鍋」の辛さは調節できて、色の濃さとは関係ありません。わたしはいつも「小辣(シャオ・ラー)」(ちょっと辛め)です。

 台湾の鍋はスープの味が二種類楽しめるだけでなく、具も海鮮(エビや、鯛等)や肉(牛、豚、鶏、羊等)の他に、ホルモンなども普通に入れるし、野菜もたっぷり。鍋の中はかなりにぎやかな感じです。タレにつけて食べますが、タレの中に薬味的に生のニンニクの芽を刻んだのを入れるのがポイントで、これはたっぷり入れます。
 あと、日本人にとって珍しいものとしては、「鴨血(ヤー・シュエ)」があります。(下の写真を参照)



「鴨血」というのはアヒルの血をゼリー状に固めたもので、台湾の鍋料理の定番です。「補血(プゥ・シュエ)」作用があると言われ、貧血の人などに効果があると言われています。わたしは、単に味的に好きで食べています。「血」でイメージされるような生臭さはなく、つるつるっとした食感でおいしいです。

 さて、鍋が煮えてきました。こんな感じです。



 赤い方、確かに「地獄の釜」っぽい(笑)。
 でも、辛さは本当に大したことはなく、けっこうあっさりしています。
 
 え? 信じられないって?
 まあ、確かに見た目が見た目なので、その気持ちはわかりますが……。

 もうこれは実際に食べてみるしかないですね。
 コロナ、はやく収束してくれないかなあ……。

 今日のBGMは張宇の「傘下(サン・シィア)」です。URL:https://youtu.be/0UdZ0_FNBQ4

 雨ですからね。

 最後に、新年のご挨拶を。
 日本語では旧年中は「よいお年を」、年が明けてからは「明けましておめでとう」と言い方が違いますが、中国語ではどちらも同じ言葉で大丈夫です。

 新年快樂(シン・ニィエン・クゥアイ・ルゥ)

※1 森見登美彦『夜は短し歩けよ乙女』、角川文庫、2008年、P121。

 


 
 







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