第10話 パパ活アプリ(マチアプ)の実態

文字数 2,805文字

 若い世代を中心にスマホで簡単に異性を探せると評判なのがマッチングアプリ。女性からもアプローチしやすいので人気を得ている。
 このマッチングアプリ(略してマチアブ/P活特化型、倶楽部=通称デートクラブも含む)は多種多様で数も多い。大抵は男性側に課金される。ひとりの男性から月に5000円徴収したとして500人集めれば、年に3000万円になる。
 設備投資はシステム開発と宣伝費だが、理系のプロミンクが得意な兄ちゃんに20万円で作って貰えるし、宣伝はTwitterでタダ。わざわざ金を払ってプロモで流すよりも、何人もの会員女子からのツイートの方が効果的。いわゆるステマ戦略。
 そうサクラさんを使う。別に雇わなくても成りすましが出来る。このアプリを利用して、いかに、よい男性(人によって定義は替わるが)、お金持ち、社会的地位のある、人柄のよい男性に出逢えたかを、いち女性を装ってツイートを繰り返す。また、ズバリ男の本音、風俗よりも安価に、素人の女子とやれると、口コミツイートを垂れ流す。風俗と検索をすると必ず眼につくように宣伝プロモ(これは有料だけど効果は絶大)を貼り付ける。
 さらには、このサクラさんは女子の本音をついた、いかにも味方を装うツイートで多くのフォロワーさんを獲得する。そりゃ、内情に詳しいアプリ内の誰かが成りすましている訳で、的を得るのは尤もなことだ。金がないくせに、オトナ目的のオジ、ジジイを創り上げては面白おかしく脚色してコキおろす。被害に遭っている女子たちに評判が上がるのはごく自然なこと。ただ、これらのアカには必ず、(bit.)がついて何らかのアプリに誘導する仕組みになっている。

 さてさて、儲かっていそうなマッチングアプリだが、一応、許認可制となっている。管轄は警視庁。「インターネット異性紹介事業の定義に関するガイドライン」といかにもお役所仕事らしい規則をもうけ、アプリ業者が性犯罪の温床にならぬように務めている。
 骨子は、売春をするな、その斡旋の場となるな、特に未成年には厳しく当たれ、てなとこ。申請は、本拠となる所在地を管轄する警察署の生活安全課少年係。所定のフォーマットが提供される。民主国家である我が国では、優良たる国民に出来ないことはない。誰にでも認可は下りる。(指定暴力団、前科アリは難しい)
 急拡大する業界の裏には、生涯未婚率の上昇と極端な少子化の現実がある。国家の存亡として子供を増やしたい。働き手を充分に抱えて豊かなお国にする。たんまり税金を取って、そして政治屋さんたちが輝きたい。こんな思惑が透けて見える。
 成長する界隈は必ず多様化する。そして犯罪行為スレスレが儲かるのも世の習い。異性紹介となればやはり売春が出て来る。世の中には男女しかおらず、誰もがひとツガイから生まれて来たわけで、この事実はどうしても曲げられない。(一般論です。ジェンダー平等を否定するものではありません) 
 性欲は人間社会繁栄の要であり働き手を作る唯一の手段。売春は禁止と法律で謳っているにも関わらず、成人男女に罰則がないのもこんな理屈が働いているのでは、とつい勘ぐってしまう。
 単純に男女の出逢いを提供するマッチングから今ではパパ活を仲介するアプリが幅を利かせ、さらにはセフレ、愛人作るアプリまで存在する。パパ活は茶飯のみでお手当を貰う行為の筈が、どのパパ活アプリでも売春を求める男性会員ばかり。
 これが異性紹介事業の実態。こうなることは充分に予想出来たはず。アプリの運営も罰則がつく未成年者だけは会員にならないように気を配るだけ。他の売春に関する規定はまずない。健康な男子がセックスを求めるのは、健全なる行為と言わんばかりに無視している。変な正義感を出して、サブスク会員を減らすのはおバカな仕業なのだ。
 しかしながら、男女の交友には必ず被害者が付き物。それを性被害者と呼ぶ。ほとんどが二十歳前後の世間を知らない未熟な女子たち。声をあげれば補導されるので、未成年女子も相当数居ると予測される。
 ここのところアプリ運営にはサブスクの会員による売春の勧誘、つきまといやらストーカー被害の報告が毎日のように入るようになった。 

 どうにか、して欲しい!

 被害女子は悲痛な叫びをあげ、窮状を訴える。中には悪質な輩を会員にしているアプリ運営の責任を問うものまである。24時間365日監視体制で安全と謳っている以上、何か策を施さなければならない。そこで運営は、これら悪質な男性会員の過去の通報歴を掲載し、注意を呼び掛ける。また、度重なった場合には強制退会措置をとる。
 だけど、これはあくまでお仕着せの業務手順。本当の悪党は別人に成りすませて何度も入会し悪行を重ねる。彼らの通報歴は常に真っ白のまま。本来ならば、会員の個人情報を唯一握っているのだから、認可を受けている警察と連携して被害防止に努めなければならない。
 けれど、アプリ運営業者とは、社会の役に立ちたくてこの事業に参画している訳ではない。たまたまはやっていて、儲かりそうで、設備投資が少ない事業に、いち早く手を染めたに過ぎない。下火に慣ればすぐに、次なる儲かる業種へ鞍替えする事業者の集団。なので何とか責任を放棄してしまいたのが本音。取り締まる警察だって、若年女子が被害に遭いそうな業種が流行り出したから、慌てて最低限の規制を設けたに過ぎない。

 と、とあるアプリ運営にいちゃもんを付けて来た〇弁護士会所属の中堅弁護士がいた。その内容は、会員の女子が男性会員のひとりからストーカー被害を受けているとするもの。訴状には、アプリ運営を異性紹介事業義務違反で告発、また被害女性に300万円の弁済金を要求する、とある。
 早速、アプリ運営の会議が開かれた。とは言っても4人しか居ない。個人投資家の代表者にプログラムメンテスタッフ3名のみ。少数で年間億を超える売上をあげられるから美味しい。
「この弁護士は女子会員の誰かに雇われたってことですかね?」
 30代のプログラマーが代表者に聞く。
「ちょっと、待って。この人に覚えがあるわ」
 横からもうひとりのプログラマーが。こちらは女子の気持ちを理解しようと急遽、バイトで雇った20代の女子。
「VIP会員に数名、弁護士がいるでしょ。その中のひとりよ」
 これはお手柄だ。代表者は女子をべた褒めし、早速、こんな時のために月に数万円払っている顧問弁護士に連絡をとる。
「ほお、つまりアプリで知り合った女の子に頼まれたってなところでしょうね。分かりました。その弁護士が所属の〇弁護士会に通報します。弁護士がパパ活とはねぇ。ちょっと品格が問われます。
 いずれにせよ、弁護士の処分は弁護士会がします。買春してるとなれば即資格剥奪です。法律違反者ですからね。彼は買春していない証拠を揃えなければならない。御社を訴えている暇はなくなりますよ」
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み