第８話 仕方なくパパ活に
文字数 2,000文字
JD１の赤井穂乃花は、生活に困窮していた。実家は母子家庭。小さい頃からの夢だった看護師職になるためには、３年生の専門学校に通う必要がある。試験には合格したものの、(借金)に全額頼らざるを得なかった。ざっと400万円かかかる。
申し訳なさそうに微笑む母。でも、女手ひとつでここまで育ててくれた母親に、これ以上集る訳にはゆかない。いつしか穂乃花は若いにも関わらず、しっかりものの女子に仕上がっていた。
将来の設設計図を描き、現実的な返済額を設定し、それに基づいて借金の種類を選定する。一生くいっぱぐれのない看護職もこの構想を大いにあと押しをする。半分を奨学金に、もう半分は教育ローンにした。看護職なら毎月４万円でも払えるだろう。そしたら４年で完済できる。もう半分の教育ローンは、在学中にバイトで返還してしまおう。
ただバイトの方はコロナ禍で苦戦を余儀なくされる。学生はみなバイトが欲しい。少ない枠をめぐっての争奪戦がはじまった。穂乃花はここでも母子家庭の弊害を被る。身元保証人が父親でないと、バイトと言えども嫌われた。
仕方がない。風俗とも考えたがこちらも不景気。地方の花街などは壊滅。ようやく長野駅近でガールズバーの職にありついた。それでも時給1600円で７時から12時まで週３のシフト。ノンアダルトで気軽だが、これでは月の生活費ギリギリで終わる。
昼バイトを長野市内からさらに広範囲で捜し始めていた時に、都内の大学に行った親友からヒントを貰う。
「セナちゃん(源氏名)、可愛いからパパ活でも行けるんじゃないかな」
彼女は大規模果樹園の一人娘で金欠貧困とは縁遠いが、ひと足早く、違う理由からパパ活を始めていた。三月経った今では、月に30は稼げてるという。彼女曰く、数打って運を拾う、そうだ。
パパ活とは金欠貧困女子に残された集金のための真っ当な活動。だけど大都市と違い、こんな地方都市でも需要があるものか。穂乃花は端から諦めていた。何しろ狭い地域のこと。身バレの心配もある。
とあるアプリのみで募集をはじめる。所詮、お客は限られている。ツールをたくさん作っても無駄だ。
一緒にお茶しませんか？ わたしトリマーの資格をめざして資金を貯めています。
7000円支援頂けると嬉しいです。
とにかく、素人、清楚、知性、謙虚、ひたむきさが大事らしい。最初のひと月は反応はあるものの、冷やかし、セクハラ、ドタキャンに悩まされた。さらにもろに売春勧誘ばかり。売春は犯罪だと知ってるのか？ ついこの前♂族は援助交際に群がったかと思えば、今度はパパ活に集まりだした。性欲に目が眩む。世界を見渡せば、祖国の為に戦地赴く男性たちもいるのに。
そうそう、最後に辛抱強くも大切らしい。そして、とうとう初めてのお茶で10万円くれるパパに出逢う。
穂乃花のプライベートは秘匿されているが、この40代後半のパパは個人情報を隠そうとしない。名刺を貰い、肩書には長野〇病院副院長と記されている。お茶の場所は市内で１番高級なホテルラウンジ。この場所は親友から奨められていた。隣との間隔が確保されていて単価も高いので、パパ活には都合がよいらしい。
「いやいや、何回かPJさんには会ったけど、セナちゃんは僕の好みだよ」
そう言ってペイペイにいきなり10万円を振り込んでくれた。唖然とする穂乃花に、
「あれ、こういうパパを探してたんじゃないの？」
そりゃそうだけど、アダルトを要求されては困る。受取完了タッチを逡巡していると、
「男だから性欲はあるよ。でもいきなりセフとか愛人を捜してたんじゃないよ。交際倶楽部には『VIP』って言うカテゴリーがあって、医者、弁護士、会社経営者を集めて女の子を斡旋する場もあるんだけど、紹介される女子はそれ系の玄人さんばかりだ。セナちゃんみたいなフレッシュさんには滅多にお目にかかれない。分かるでしょ？」
まぁ、なんとなく理屈は判る。いざとなればペイペイで返金すればよい、と考え受取を完了させた。さらに10日後にこのホテルでの食事も約した。
自宅に戻ってからパパ活を実感する。Twitterを見れば、20、30貰ったなんてツイートはチラホラ見られる。しかしどこか遠い世界のお話しで、実際にその手の太パパに出逢ってみてもなお、現実感は希薄だ。未だに信じられない。それもこんな地方都市で。
そうだ、名刺。長野〇病院とは市内では有名。私立だが、県立、市立病院と並ぶシェアを誇る。ホームページを開いて実際に確認して見る。写真付きの医師一覧が掲載されていて、嘘なら一目瞭然。しかし本当だった。この写真の人だ。
有名病院の副院長がパパ活なんて。この事実を患者さんたちが知ったらどう感じるだろうか。高い診療報酬がパパ活のお手当に化ける。誰だっていい気持ちなんてしない。おまけに新聞記事にでもされたら病院の評判にキズが付きかねない。
申し訳なさそうに微笑む母。でも、女手ひとつでここまで育ててくれた母親に、これ以上集る訳にはゆかない。いつしか穂乃花は若いにも関わらず、しっかりものの女子に仕上がっていた。
将来の設設計図を描き、現実的な返済額を設定し、それに基づいて借金の種類を選定する。一生くいっぱぐれのない看護職もこの構想を大いにあと押しをする。半分を奨学金に、もう半分は教育ローンにした。看護職なら毎月４万円でも払えるだろう。そしたら４年で完済できる。もう半分の教育ローンは、在学中にバイトで返還してしまおう。
ただバイトの方はコロナ禍で苦戦を余儀なくされる。学生はみなバイトが欲しい。少ない枠をめぐっての争奪戦がはじまった。穂乃花はここでも母子家庭の弊害を被る。身元保証人が父親でないと、バイトと言えども嫌われた。
仕方がない。風俗とも考えたがこちらも不景気。地方の花街などは壊滅。ようやく長野駅近でガールズバーの職にありついた。それでも時給1600円で７時から12時まで週３のシフト。ノンアダルトで気軽だが、これでは月の生活費ギリギリで終わる。
昼バイトを長野市内からさらに広範囲で捜し始めていた時に、都内の大学に行った親友からヒントを貰う。
「セナちゃん(源氏名)、可愛いからパパ活でも行けるんじゃないかな」
彼女は大規模果樹園の一人娘で金欠貧困とは縁遠いが、ひと足早く、違う理由からパパ活を始めていた。三月経った今では、月に30は稼げてるという。彼女曰く、数打って運を拾う、そうだ。
パパ活とは金欠貧困女子に残された集金のための真っ当な活動。だけど大都市と違い、こんな地方都市でも需要があるものか。穂乃花は端から諦めていた。何しろ狭い地域のこと。身バレの心配もある。
とあるアプリのみで募集をはじめる。所詮、お客は限られている。ツールをたくさん作っても無駄だ。
一緒にお茶しませんか？ わたしトリマーの資格をめざして資金を貯めています。
7000円支援頂けると嬉しいです。
とにかく、素人、清楚、知性、謙虚、ひたむきさが大事らしい。最初のひと月は反応はあるものの、冷やかし、セクハラ、ドタキャンに悩まされた。さらにもろに売春勧誘ばかり。売春は犯罪だと知ってるのか？ ついこの前♂族は援助交際に群がったかと思えば、今度はパパ活に集まりだした。性欲に目が眩む。世界を見渡せば、祖国の為に戦地赴く男性たちもいるのに。
そうそう、最後に辛抱強くも大切らしい。そして、とうとう初めてのお茶で10万円くれるパパに出逢う。
穂乃花のプライベートは秘匿されているが、この40代後半のパパは個人情報を隠そうとしない。名刺を貰い、肩書には長野〇病院副院長と記されている。お茶の場所は市内で１番高級なホテルラウンジ。この場所は親友から奨められていた。隣との間隔が確保されていて単価も高いので、パパ活には都合がよいらしい。
「いやいや、何回かPJさんには会ったけど、セナちゃんは僕の好みだよ」
そう言ってペイペイにいきなり10万円を振り込んでくれた。唖然とする穂乃花に、
「あれ、こういうパパを探してたんじゃないの？」
そりゃそうだけど、アダルトを要求されては困る。受取完了タッチを逡巡していると、
「男だから性欲はあるよ。でもいきなりセフとか愛人を捜してたんじゃないよ。交際倶楽部には『VIP』って言うカテゴリーがあって、医者、弁護士、会社経営者を集めて女の子を斡旋する場もあるんだけど、紹介される女子はそれ系の玄人さんばかりだ。セナちゃんみたいなフレッシュさんには滅多にお目にかかれない。分かるでしょ？」
まぁ、なんとなく理屈は判る。いざとなればペイペイで返金すればよい、と考え受取を完了させた。さらに10日後にこのホテルでの食事も約した。
自宅に戻ってからパパ活を実感する。Twitterを見れば、20、30貰ったなんてツイートはチラホラ見られる。しかしどこか遠い世界のお話しで、実際にその手の太パパに出逢ってみてもなお、現実感は希薄だ。未だに信じられない。それもこんな地方都市で。
そうだ、名刺。長野〇病院とは市内では有名。私立だが、県立、市立病院と並ぶシェアを誇る。ホームページを開いて実際に確認して見る。写真付きの医師一覧が掲載されていて、嘘なら一目瞭然。しかし本当だった。この写真の人だ。
有名病院の副院長がパパ活なんて。この事実を患者さんたちが知ったらどう感じるだろうか。高い診療報酬がパパ活のお手当に化ける。誰だっていい気持ちなんてしない。おまけに新聞記事にでもされたら病院の評判にキズが付きかねない。
