はじめに 問題解決の糸口は、おカネの仕組みにある

文字数 1,495文字

 いま、多くの人が日本経済に対して不安を感じておられるでしょう。新聞やテレビには、暗いニュースばかりが溢れています。日本のGDPがドイツに抜かれて世界4位に転落し、政府の借金は増え続け、円安がすすみ、インフレは止まらず、そして将来には増税が待ち受ける。

 しかし、多くの人は、日本経済を復活させるために日本がどんな経済政策を打てばいいのかわからないと思います。新聞やテレビに出てくる識者は、それぞれ違うことを主張する。やれ金融緩和はダメだ、いや、金融緩和を継続しろ。やれ増税して国の借金を減らせ、いや、増税すれば景気が腰折れする。何が正しくて何が間違っているのか、判断することが難しいと感じておられるでしょう。

 そうした疑問を解決する一つの糸口は、間違いなく「おカネの仕組みを知ること」にあります。現代の日本国民のおそらく90%の人は、おカネのしくみを知らないまま生活しています。経済を動かしている大きな原動力はおカネです。そのおカネがどのように作られ、どのように流通しているかを知らないのであれば、それこそ、目隠ししたまま歩くようなものです。何が正しくて何が間違っているか、判断できないのです。

 国民の90%がおカネの仕組みを知らない? そんな馬鹿な。そう思う人も居るでしょう。では、次の問いに正しく答えることができるでしょうか。

 おカネは誰がどうやって発行しているのか?

 多くの人はこう答えるでしょう。「そんなの知っている。おカネは日本銀行が輪転機を回して作っている」と。確かにそれは間違いではありませんが、それでは答えとしては不十分です。何も知らないのと同じです。

 確かに一万円札や千円札のようなお札、日本銀行券は日本銀行が発行しています。しかし、現代の金融システムにおいて、日本銀行の作っているおカネは、世の中のおカネの一部分に過ぎません。そのほかのおカネは、民間の銀行が作り出しているのです。

 しかも、そのおカネは、それら銀行からの、借り手の負債として発行されるものなのです。すなわち、おカネは借金として発行されるのです。

 もし、このことを知らなかったとしたら、あなたはおカネの仕組みについて全く何も知らずに生活していることになります。専門的には「マネタリーベースとマネーストック」そして「信用創造」と呼ばれる仕組みのことです。

 しかし、多くの人はこう答えるでしょう「私はおカネの仕組みなんかに興味ない」と。しかし、実はおカネの仕組みが、政府の借金の問題や、インフレやデフレの問題、増税の問題にも深く関係しているのです。おカネの仕組みを知らなければ、経済のことを正しく理解することは不可能なのです。

 日本に住む多くの人々がおカネに無知のまま生活しているなら、結果として、おカネを熟知している人たちに騙され、何も知らないうちに、政治を、世の中を、彼らの都合の良いように、動かされてしまうのです。

 本連載では、本当に何も知らない人のために、専門用語は使わず、なるべくやさしく、簡潔におカネのしくみを説明しようと試みました。難しい部分を省いていますので、微妙に実際と異なる部分もありますが、およそ、大まかに全体像を掴むことはできるはずです。

 そして、おカネの初歩的な理解から初めて、やがて経済の他の問題についても考えたいと思います。ゆくゆくは少々専門的な知識も説明していきたいと思います。

 あなたがおカネや経済に関する初心者なら、本連載をお読みいただければ、間違いなく、これまでおカネの仕組みについて考えていたことが、ひっくり返ることになるでしょう。

 なお、本文は、対話形式ですすめます。
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