8)現代金融システムはバブル経済の温床である

文字数 2,964文字

(じいちゃん)

 現代の金融システムがバブル経済の温床になっている、という話をしよう。ところでネコはバブル経済とはどんなものか知っておるかな。

(ねこ)

 話には聞くけど、知らないにゃ。ねこが生まれた時はバブルなんかとっくに終わっていたし、ずっとデフレ不況だったにゃ。ただ、バブルの時は景気がすごく良かったって聞いたにゃ。なんでかにゃ?

(じいちゃん)

 バブル経済とは、資産(株などの証券や土地などの不動産)の価格がどんどん上昇し続け、それに伴って景気が良くなる状態と考えられる。なぜ資産価格がどんどん上昇すると景気が良くなるのか。それは、多くの人が資産を売ったり買ったりすることで、おカネを儲けることができるからだ。

 おカネを儲けた人々は、そのおカネでまた資産を買うのじゃが、すべての儲けを資産の再購入に振り向けるわけではない。その一部を消費に回すのじゃ。すると消費が活発になり、商品がどんどん売れて景気が良くなる。

 景気が良くなると、企業は設備や研究開発に投資するから、より高品質の商品がより多く作られるようになる。そして労働者の賃金を引き上げて人手を確保しようとするので、多くの人におカネが行き渡るようになる。人々の所得が向上して豊かになる。

(ねこ)

 なんにゃ、バブル経済は夢のようにすばらしい状態なのにゃ。バブルは、デフレ不況なんかよりも、ずっともいいにゃ。

(じいちゃん)

 その通りじゃな。バブルの状態がずっと続くなら、それに越したことはない。じゃがバブルは必ず崩壊する。なぜなら、現代の金融システムがバブルの発生と崩壊の温床になっているからじゃ。それは、現代のおカネがすべて「貸し出し」つまり「借金」によって作られていることが深く関係している。

(ねこ)

 ふにゃ、現代の金融システムがバブルとバブル崩壊の温床なのかにゃ。どうしてにゃ。

(じいちゃん)

 バブルの発生のメカニズムはこうじゃ。まず最初に誰かが資産を購入する。そして資産の価格が値上がりした時点で資産を売却する。資産の売買差益が儲けとなる。景気が良くなると資産の需要が増えて資産価格が上昇し始める。

 すると、自分の持ち金だけではなく、銀行から借金して資産を買おうと考える人が出てくる。銀行からおカネを借りて資産を買ったとしても、資産が値上がりすれば、資産を売却して売買差益で儲けることができる。

 やがて大勢の人が銀行からおカネを借りて資産を買うようになると、市場では資産の価格がどんどん値上がりするようになる。銀行からおカネを借りて資産を買ったとしても、資産が値上がりを続ける限り、売買差益で儲けることができる。

 すると、その様子を見た他の人達も儲けようと考えて、銀行からおカネを借りて資産を買うようになる。すると、資産はますます値上がりする。資産を買う人がどんどん増える。こうして資産価格は右方上がりに上昇を続ける。

(ねこ)

 なるほど、みんな銀行から借金してでも資産を買うようになるのかにゃ。銀行からの借金がどんどん増えるということは、その分だけ世の中のおカネの量もどんどん増えるということかにゃ。

(じいちゃん)

 その通りじゃ。バブルになると銀行からの貸し出しがどんどん増えて、世の中のおカネがどんどん増える。それらのおカネは資産を売買する人たちの儲けになるから、それが消費を押し上げることになり、景気が絶好調になるんじゃよ。日本のバブル景気も、これと同じようなものじゃ。

 じゃが、ここで注意すべきなのは、このおカネはあくまでも「銀行からの借金」であるという点じゃ。つまり、バブルで資産価格が上昇すれば上昇するほど、同時に、銀行からの借金も爆発的に増えるということじゃ。銀行から直接借りなくとも、いろいろなルートを経て、結局は銀行からの借金がおカネの出どころになる場合も多い。

(ねこ)

 爆発的に銀行からの借金が増えているんだにゃ。それがバブルなんだにゃ。

(じいちゃん)

 そうじゃ。資産の売買を通じて、銀行から借りたおカネが儲けに化ける。一種のマネーロンダリングのようなものじゃな。さて、銀行の借金が儲けに化けて世の中にどんどん出回るようになると、景気が良くなりすぎて、やがてインフレを引き起こすようになる。景気加熱じゃな。すると、日銀のような中央銀行は、貸出金利の引き上げに動き始める。いわゆる利上げじゃ。

 貸出金利が上がると、借金の利息の支払いが増える。すると銀行からおカネを借りて資産を売買しても儲けが出にくくなり、借金をしてまで資産を買う人は減ってくる。すると資産の価格は思うように上がらなくなる。すると資産の取引から手を引いて、銀行に借金を返済しようと考える人が増えてくる。そうした人たちは資産を売却しはじめる。

 資産を売却する人が増えると、資産の価格は下がり始める。すると、大きく値下がりする前に売ってしまおうと考える人が増え始め、さらに資産価格が大きく下がる。すると、その他の人たちもパニック状態になり、売りが売りを呼び、資産価格は一気に崩壊する。これがバブル崩壊じゃ。

 売り逃げできた一部の人は大儲けできるが、売り遅れた大勢の人たちが、返済不能な膨大な借金を抱え込むことになる。おかげで不良債権が山のように残される。

(ねこ)

 知らなかったにゃ。こんなこと学校でも、新聞やテレビでも教えてくれないにゃ。

(じいちゃん)

 新聞やテレビはウソは報道しないが、都合の悪い真実も報道しない。それが「報道しない自由」じゃな。それはジャニーズ問題で明らかになったじゃろう。

 さて、ここで良く考えてみるのじゃ。バブル経済では、銀行から借金して資産の売買を行うことが、資産価格の上昇を下支えしていることがわかる。ポイントは「民間銀行が、おカネを発行して貸し出している」という点じゃ。

 もし、銀行が、自分の金庫の中にあるおカネだけを貸し出しているなら、バブルは発生しない。なぜなら、金庫の中のおカネをすべて貸してしまえば、それ以上、おカネを貸すことはできなくなるからだ。そうなると、ある時点で資産の売買規模は伸びなくなる。

 ところが、銀行は預金を発行して貸し出している。そのため、借りたいという人がいれば、おカネをどんどん発行して貸し出すことができる。そのため、資産の売買規模はどんどん拡大し、バブルが成長することになるんじゃ。

 すなわち、「世の中のおカネが借金によって作られるシステム」であることが、バブルの本質的な原因なのじゃ。

 従って、現在のような金融システムが続く限り、どんなに規制を強化したところで、バブルは必ず発生し、何度も繰り返すことになる。実際そうなっている。1929年の史上空前のバブル崩壊と世界大恐慌、戦争を挟んでのちは、日本のバブル、米国のITバブル、サブプライムローンバブルとリーマンショック。バブルとバブル崩壊がなくなることは永遠にないのじゃ。

(ねこ)

・・・衝撃的な事実なのにゃ。

(じいちゃん)

 そうじゃな。じゃが我々は、そういう世界にすんで居るのじゃよ。

 そういえば、世界大恐慌の頃に言われた、ことわざのような言葉がある。「靴磨きの少年が株式相場を口にするようになったら、バブル崩壊は近い」。さて、新ニーサが靴磨きの少年でないことを祈るばかりじゃ。
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