1)おカネは国だけでなく、民間銀行も発行しているという事実

文字数 1,558文字

(じいちゃん)

 今日は「おカネは国だけではなく、民間銀行も発行している」という話をしようと思うのじゃ。民間銀行とは、ねこも知っているような、みずほ銀行とか、りそな銀行とか、そういう民間の銀行のことじゃ。市中銀行とも呼ばれる。

 おカネを新たに発行して、世の中のおカネの量を増やす役割を担っているのは、国だけじゃないのじゃよ。

(ねこ)

 ふにゃ。それは変だにゃ。新たにおカネを発行できるのは国だけじゃないのかにゃ。民間銀行が新たにおカネを発行しているなんて、聞いたことがないにゃ。それじゃあ民間の銀行もお札を印刷しているのかにゃ?

(じいちゃん)

 いやいや、民間銀行はお札、つまり銀行券は発行していない。銀行券は「現金」と呼ばれ、日銀(日本銀行)だけが発行できる。それに対して、民間銀行が発行するおカネは「預金」と呼ばれるおカネじゃ。日銀は現金を発行し、民間銀行は預金を発行する。

(ねこ)

 えー、でも、預金って、預金者が現金を民間銀行に預け入れた時に、預金通帳に数字として記載されるのですにゃ。だから、現金が預金に変わっただけで、おカネが新たに発行されたわけじゃないのにゃ。

(じいちゃん)

 ねこの言う通り、預金者が銀行に現金を預け入れると預金になる。だからこの場合、現金が預金に変わっただけで、新たにおカネが発行されたわけではない。しかし、預金は銀行が現金を預かった時に通帳に記載されるだけではないのじゃ。銀行が誰かにおカネを貸し出す時に、新たな預金が発行されて、通帳に記載される。

 銀行は、個人や企業におカネを貸し出す際に、新たに預金を発行して、その預金を貸し出しているのじゃよ。

(ねこ)

 へえ、民間銀行は、おカネを貸し出す際に、新たに預金を発行しているのか。でも、銀行って人々からおカネを集めて、それを貸しているんじゃないの?

(じいちゃん)

 それは違うのじゃ。確かに銀行は人々からおカネを集めている。集めているのは現金じゃ。しかし、現金を貸し出しているのではなく、あくまでも銀行が預金を発行しておカネを貸し出している。その証拠に、民間銀行が貸し出しを増やすと、世の中のおカネの量が増えるのじゃよ。

 民間銀行の貸し出しによって世の中のおカネの量が増えるという事実は、貸し出しの際におカネを発行している証拠にほかならない。発行しないのにおカネの量が勝手に増えるわけがないからね。

(ねこ)

 えー、本当かにゃ?

(じいちゃん)

 本当じゃよ。なんなら日銀が行っている「金融緩和政策」を考えてみるとすぐわかるぞ。金融緩和というのは、日銀が、様々な方法を用いて、民間銀行の貸出金利を下げる政策じゃ。金利を下げる政策なので「金利政策」とも呼ばれる。銀行の貸出金利を下げると、借金の利息の支払いが減るから、おカネを借りやすくなる。

 すると、おカネを借りたいと希望する人が増えて、民間銀行の貸し出しが増える。貸し出しが増えると、世の中のおカネの量が増えるのじゃ。こうして世の中のおカネの量を増やすことを金融緩和と呼ぶのじゃ。おカネを増やすから、緩和というのじゃな。

(ねこ)

 ふにゃ~。ねこは、てっきりおカネは国が発行するものだから、それ以外の人が発行しているとは思ってもみなかったにゃ。ということは、世の中のおカネは国が発行しているものと、民間銀行が発行しているものが、入り混じっているんだにゃ。

(じいちゃん)

 そういうことじゃ。実際にはもう少しややこしいことになっておるが、つかみとして理解するには十分じゃ。

 日本国民の多くは「おカネは国が発行している」としか思っておらん。じゃが、実際には民間銀行が新たに発行しているおカネのほうが、はるかに多いのじゃよ。おカネについて考える場合には、まずそのことをきちんと理解しておく必要があるのじゃよ。

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