2)国がおカネを発行するには、国債を発行しなければならない

文字数 1,996文字

(じいちゃん)

 今日は「国がおカネを発行するには、国債を発行しなければならない」という話をしよう。ところで、国はどうやっておカネを発行しているか知ってるかい?

(ねこ)

 そんなの、ねこも知ってるにゃ。日本銀行が輪転機を回してお札(銀行券)を印刷しているのだにゃ。

(じいちゃん)

 確かに銀行券は輪転機を回して印刷される。じゃが、現代の経済システムでは、あらゆる資産や負債は、帳簿によって管理されておる。だから、輪転機を回して銀行券を印刷しても、それは紙に印刷しただけであって、それだけでは、おカネを発行したことにはならない。銀行券が帳簿に記載されなければ、おカネとしての意味を成さないのじゃ。その帳簿を「バランスシート」と呼ぶ。

(ねこ)

 ふにゃ、おカネを印刷しただけではダメなのかにゃ。

(じいちゃん)

 そうじゃよ。紙に印刷して、それを帳簿に記載してはじめておカネになる。

 また、日銀は銀行券以外にもおカネを発行している。それが日銀当座預金と呼ばれる預金じゃ。この預金は民間銀行の預金とはまったく別の、特別な預金だ。日銀の預金なので、日銀当座預金も広い意味では現金とされる。

 このように、たとえ紙に印刷されていなくても、日銀当座預金の数字として記載されていれば、おカネなんじゃ。この場合も銀行券と同じように、帳簿におカネとして記載されることでおカネになる。

(ねこ)

 へええ、知らなかったにゃ。じゃあ、日本銀行の帳簿に、どんどん日銀当座預金の数字を書き込めば、おカネはどんどん増えるのかにゃ。

(じいちゃん)

 その通りじゃよ。じゃが、どんどん増えるからと言って好き勝手にどんどん数字を増やしたら、世の中がおカネだらけになって大混乱になる。だから、おカネは一定のルールに基づいて発行されておるのじゃ。それが通貨制度じゃ。

(ねこ)

 通貨制度?

(じいちゃん)

 そうじゃ、通貨制度じゃ。日本の通貨制度は「管理通貨制度」であり、また同時に「準備預金制度」でもある。管理通貨制度は国が現金通貨を発行する基本的な考え方で、準備預金制度は民間銀行が預金通貨を発行する制度になる。今回は国がおカネを発行する方法について話そう。つまり管理通貨制度じゃな。

(ねこ)

 管理通貨制度か、難しそうだにゃ。

(じいちゃん)

 いやいや、簡単じゃよ。管理通貨制度で国がおカネを発行するには、まず政府が国債を発行する必要がある。例えば10兆円の国債を発行する。次に、この国債を日銀が買い入れる。その際に、日銀が日銀当座預金を発行して、政府の口座(日銀当座預金口座)に振り込む。この政府の口座に入っている数字がおカネじゃ。

 政府が国債を発行して日銀が買い入れ、その際に日銀がおカネを発行して政府に渡すことでおカネが発行される。つまり、日銀がおカネを政府に貸し出すことで、おカネが増えるわけだ。「おカネというのは、いわば政府の借金」じゃな。

 実際には、過去に政府が発行して民間銀行が保有しておる国債を日銀が買うケースが多いが、これにしても、まずは政府が国債を発行する(借金する)ところからはじまる。

(ねこ)

 げげっ。政府が日銀から借金することでおカネが発行されるのかにゃ。借金は悪いものだにゃ。借金しないでおカネを発行することはできないのかにゃ。

(じいちゃん)

 管理通貨制度の下ではできない。国がおカネを発行するには、日銀から政府が借金をしなければならないルールなんじゃ。とはいえ、例外的に、政府が借金しなくても発行できるおカネがある。それが「硬貨」じゃ。500円や100円のような硬貨は、政府が借金せずに発行できる。じゃが、その金額は微々たるものじゃ。

(ねこ)

 えー、おカネは国の借金なのかにゃ。なら、その借金をぜんぶ日銀に返したらどうなるのかにゃ。

(じいちゃん)

 世の中のおカネがすべて消えてなくなる。信じられないかも知れないが、冷静に考えれば当たり前じゃ。おカネは借金なのだから、すべて返してしまったら、無くなるのはあたりまえじゃ。

 では、なぜ世の中のおカネが消えないのかと言えば、借金をすべて返していないからだ。だからこそ、日銀の保有する国債をすべて無くすことは不可能だし、政府の発行する国債をすべて無くすことも不可能なのじゃ。国債がなければ、おカネは発行できないからじゃ。

(ねこ)

 ・・・信じられないにゃ。

(じいちゃん)

 それはそうじゃろう。そもそも大多数の国民は、おカネの仕組みを何も知らん。いや、知らされておらん。かくいうわしも、10年以上前には何もわからんかった。じゃが、勉強するに従って、おカネの仕組みがだんだんわかってきたのじゃよ。

 まあ、「子ネコでも分かる経済問題の話」では、おカネの仕組みを簡単に、少しずつお話していくので、継続して読んでくれれば、やがておカネの仕組みがわかり、金融政策に関する知識もついてくるじゃろう。

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