21)通貨発行権を捨てたユーロ圏の国々
文字数 1,989文字
(じいちゃん)
ユーロという通貨を国の通貨として採用しているヨーロッパの地域を「ユーロ圏」と言う。ユーロを使っている国はドイツ、フランス、イタリア、スペイン、ギリシャなど20カ国ある。それらの国は、いずれも国民の主権であるはずの通貨発行権を放棄しておるのじゃよ。
(ねこ)
にゃー、主権を放棄してるのかにゃ。どういうことかにゃ。
(じいちゃん)
ユーロというおカネは欧州中央銀行(ECB)が発行し、それをユーロ圏の各国が使っておる。じゃから、それぞれの国で自ら自国通貨を発行することはできないのじゃ。通貨発行権とは、自国で自国の通貨を発行する権限じゃから、ユーロ圏の国々は通貨発行権を放棄していると言えるのじゃ。
たとえば、日本は自国通貨を持っているので、日本国は自らの判断で、必要に応じて日銀などが円通貨を発行することができる。一方、ユーロ圏の国々は自国通貨はないので、どんなにユーロが必要になったとしても、自らの判断で通貨を発行することはできない。自国以外の第三者によっておカネの発行がコントロールされておるんじゃよ。
(ねこ)
ふにゃ。それって、問題が起きないのかにゃ?
(じいちゃん)
最も簡単な例で言えば、国債のデフォルト(債務不履行)問題がある。いわゆる財政破綻の問題じゃな。
たとえば日本国において、自国通貨である円建てで国債を発行している場合、仮に政府の税収が不足して国債の償還のためのおカネが足りなくなったとしよう。この場合、デフォルトを回避するために日銀が円通貨を発行して国債を買い取ることができる。自国通貨である円を発行できるからじゃ。これにより、国債は必ず償還が可能となる。
一方、ユーロ圏の国がユーロ建てで国債を発行している場合、同じように政府の税収が不足して国債の償還のためのユーロが足りなくなったとしよう。これは過去にギリシャで生じている。ユーロ圏の国は、自国でユーロを発行することはできないので、税収が足りなければ、もはや自国だけでデフォルトを回避することは不可能じゃ。
ギリシャのデフォルトが問題になったのは、このためじゃ。ギリシャはユーロを発行できないので、他の国からユーロを借金して調達し、デフォルトを回避しなければならなくなった。
このように通貨発行権を有する国は自国通貨建ての国債でデフォルトすることはないが、ユーロ圏のように通貨発行権を放棄した国は、国債でデフォルトするリスクが高い。そのため、財政運営に大きな制約を受けることになる。
(ねこ)
財政運営に大きな制約を受けるって、どういうことにゃ?
(じいちゃん)
必要な財政支出ができない場合があるということじゃ。ユーロ圏の国は自国通貨を発行できないので、国債を発行すれば発行するほど国債のデフォルトリスクが高まる。だから、国家運営のためにどんなにおカネが必要だったとしても、国債を発行することは避けたい。
だから政府の予算は、あくまでも税収の範囲に収める必要が出てくる。そのため、ユーロ圏の国は均衡財政、財政健全化が絶対条件となる。もし政府の予算を拡大したければ、増税するしか方法がない。
(ねこ)
そうか、それで財政破綻になったギリシャでは、財政支出を切り詰めて年金や社会保障を削減し、増税して国民からカネをむしり取ったんだにゃ。
国債のデフォルト以外に問題はないのかにゃ。
(じいちゃん)
まだある。それは経済政策に支障が出るという問題じゃ。日本の場合、日本の景気が悪くなれば、景気を刺激する政策として日銀が金利を引き下げることができる。これを「金融政策」と呼ぶのじゃ。どの程度、どんな方法で金利を下げるかは、日本の経済状況に応じてきめ細やかに行うことができる。
一方、ユーロ圏の国々は、日本の日銀のように、自前で通貨を発行できる中央銀行が存在しない。そのため、それらの国々ではそれぞれの国の事情に応じた金融政策を行うことはできない。ユーロ圏の金融政策は欧州中央銀行(ECB)が行っているが、欧州中央銀行が管理する国は20カ国にもなる。当然じゃが、それぞれの国によって経済状況は異なる。ある国では景気が良く、ある国では景気が悪いということもある。だが、それらの国をまとめて同じように金融政策を行うことになるのじゃ。
しかも、欧州中央銀行は各国の政府から独立した存在であり、各国の経済政策に対して責任を持つわけではない。だから、各国の政府が欧州中央銀行に金融政策を依頼することもできない。まさに金融政策に関する国家権力を失っておるのじゃ。
(ねこ)
なるほど、通貨発行権って大切なんだにゃ。あまり考えたことがなかったけど、今後はいろいろ考えてみることにするにゃ。
(じいちゃん)
それが良いじゃろう。何しろ、この社会はおカネで動いておる。そのおカネを誰が発行し、管理するかは、大きな問題なのじゃよ。
ユーロという通貨を国の通貨として採用しているヨーロッパの地域を「ユーロ圏」と言う。ユーロを使っている国はドイツ、フランス、イタリア、スペイン、ギリシャなど20カ国ある。それらの国は、いずれも国民の主権であるはずの通貨発行権を放棄しておるのじゃよ。
(ねこ)
にゃー、主権を放棄してるのかにゃ。どういうことかにゃ。
(じいちゃん)
ユーロというおカネは欧州中央銀行(ECB)が発行し、それをユーロ圏の各国が使っておる。じゃから、それぞれの国で自ら自国通貨を発行することはできないのじゃ。通貨発行権とは、自国で自国の通貨を発行する権限じゃから、ユーロ圏の国々は通貨発行権を放棄していると言えるのじゃ。
たとえば、日本は自国通貨を持っているので、日本国は自らの判断で、必要に応じて日銀などが円通貨を発行することができる。一方、ユーロ圏の国々は自国通貨はないので、どんなにユーロが必要になったとしても、自らの判断で通貨を発行することはできない。自国以外の第三者によっておカネの発行がコントロールされておるんじゃよ。
(ねこ)
ふにゃ。それって、問題が起きないのかにゃ?
(じいちゃん)
最も簡単な例で言えば、国債のデフォルト(債務不履行)問題がある。いわゆる財政破綻の問題じゃな。
たとえば日本国において、自国通貨である円建てで国債を発行している場合、仮に政府の税収が不足して国債の償還のためのおカネが足りなくなったとしよう。この場合、デフォルトを回避するために日銀が円通貨を発行して国債を買い取ることができる。自国通貨である円を発行できるからじゃ。これにより、国債は必ず償還が可能となる。
一方、ユーロ圏の国がユーロ建てで国債を発行している場合、同じように政府の税収が不足して国債の償還のためのユーロが足りなくなったとしよう。これは過去にギリシャで生じている。ユーロ圏の国は、自国でユーロを発行することはできないので、税収が足りなければ、もはや自国だけでデフォルトを回避することは不可能じゃ。
ギリシャのデフォルトが問題になったのは、このためじゃ。ギリシャはユーロを発行できないので、他の国からユーロを借金して調達し、デフォルトを回避しなければならなくなった。
このように通貨発行権を有する国は自国通貨建ての国債でデフォルトすることはないが、ユーロ圏のように通貨発行権を放棄した国は、国債でデフォルトするリスクが高い。そのため、財政運営に大きな制約を受けることになる。
(ねこ)
財政運営に大きな制約を受けるって、どういうことにゃ?
(じいちゃん)
必要な財政支出ができない場合があるということじゃ。ユーロ圏の国は自国通貨を発行できないので、国債を発行すれば発行するほど国債のデフォルトリスクが高まる。だから、国家運営のためにどんなにおカネが必要だったとしても、国債を発行することは避けたい。
だから政府の予算は、あくまでも税収の範囲に収める必要が出てくる。そのため、ユーロ圏の国は均衡財政、財政健全化が絶対条件となる。もし政府の予算を拡大したければ、増税するしか方法がない。
(ねこ)
そうか、それで財政破綻になったギリシャでは、財政支出を切り詰めて年金や社会保障を削減し、増税して国民からカネをむしり取ったんだにゃ。
国債のデフォルト以外に問題はないのかにゃ。
(じいちゃん)
まだある。それは経済政策に支障が出るという問題じゃ。日本の場合、日本の景気が悪くなれば、景気を刺激する政策として日銀が金利を引き下げることができる。これを「金融政策」と呼ぶのじゃ。どの程度、どんな方法で金利を下げるかは、日本の経済状況に応じてきめ細やかに行うことができる。
一方、ユーロ圏の国々は、日本の日銀のように、自前で通貨を発行できる中央銀行が存在しない。そのため、それらの国々ではそれぞれの国の事情に応じた金融政策を行うことはできない。ユーロ圏の金融政策は欧州中央銀行(ECB)が行っているが、欧州中央銀行が管理する国は20カ国にもなる。当然じゃが、それぞれの国によって経済状況は異なる。ある国では景気が良く、ある国では景気が悪いということもある。だが、それらの国をまとめて同じように金融政策を行うことになるのじゃ。
しかも、欧州中央銀行は各国の政府から独立した存在であり、各国の経済政策に対して責任を持つわけではない。だから、各国の政府が欧州中央銀行に金融政策を依頼することもできない。まさに金融政策に関する国家権力を失っておるのじゃ。
(ねこ)
なるほど、通貨発行権って大切なんだにゃ。あまり考えたことがなかったけど、今後はいろいろ考えてみることにするにゃ。
(じいちゃん)
それが良いじゃろう。何しろ、この社会はおカネで動いておる。そのおカネを誰が発行し、管理するかは、大きな問題なのじゃよ。